2009年は非正規雇用労働者の話題で始まった。12月31日から1月5日まで、東京の日比谷公園に、派遣先から契約を解雇され、寮などの住居を失った人々のために複数のNPOや労働組合が組織した実行委員会によって避難所が作られ、1月2日からは実行委員会の要請で厚生労働省が1月5日まで講堂を宿泊所として提供したのだった。
資本家と労働者の間の溝
おととし、このOWでインターネットカフェで寝泊りをしている「ネットカフェ難民」について取り上げた。「日雇い派遣」などの短期就労では賃金の安さと雇用の不安定さから家を借りられず、ネットカフェで寝泊りするようになった人が増えたのは労働法制が規制緩和されて製造業を含むほとんどの業種で派遣ができるようになったためだ。そして不況になると真っ先に影響を受けるのは彼らである。
小泉政権が労働者派遣の規制緩和を進めたのは、人件費を削減したい財界の意向からだ。昨年、日本経団連は少子高齢化に伴う人口減少対策として定住移民の受け入れを提言した。労働力不足、人口減少によって内需が縮小し、日本経済、社会が不安定になるので「期間を限定した外国人労働者の受け入れ」から、「定住移民を増やせ」と、さらに要求を拡大したのである。
日本の人口が今後減少することは確実だが、それが悪いことなのだろうか。多くの製品やサービスを売ってより多くの利益を儲けようとする人にとっては市場の縮小は都合が悪い。しかしそれ以外の要因、日本という国土、環境、食料自給率、エネルギー自給率を考えると、今の人口は過剰であり、適切な数に減少することは自然なことだと私は思う。
それだけではない。その製品を作るために企業に安い賃金で雇われ、不要になれば解雇される数多くの労働者、生活者にとっては、日本経団連が求める外国人労働者と職を競い合わないとならないとなれば、安定した社会などどうしてもたらされよう。
自国で働き場がなく日本にくる外国人労働者が、安い賃金や待遇を受け入れれば、それによって日本人の賃金も待遇も悪化するのは当然である。これによる人件費の圧縮で利益を手にするのは経営者や株主といった資本家、すでに多くの富を手にしている人々だけなのだ。それこそが資本主義の大原則、「資本家の利益と富を最大にする、そのために売上げを増やし、支出を最小に抑える」に他ならない。
日本経団連の市場であり、また師として仰ぐアメリカは、昨年1年間で農業以外の給与所得者3百万人以上が職を失った(米労働統計による)。アナリストの中には、この数字を過少だとし、昨年末のアメリカの失業率は17.5%だという人もいる。
昨年、マイクロソフトのビル・ゲイツ会長はアメリカの上院労働委員会でもっと多くの外国人技術者に労働ビザを発行するよう嘆願したという。世界一富豪の資本家にとって、17.5%という失業率でも労働者不足らしい。彼が求めているのは、アメリカ人と同じ生活水準を期待しない、いつでもくびを切ることのできる「安い労働者」だと言ったら皮肉であろうか。
少なくとも日本では、資本家と労働者の溝をこれまで以上広げてはならない。支持率が最低の内閣でさまざまなことが露呈している今、国民は「主権在民」という言葉を実行する時だ。