No.861 【講演録】私が考えるカジノ経済の弊害(4)

2008年第4四半期の実質GDPは年率12.7%減と大幅なマイナスになった。雇用者報酬の減少以上に個人消費が減ったのは雇用への不安と、もう一つは政府の政策への不信からだろう。しかしもし、日本のリーダーたちが知恵と意志と強さを持って、今私が述べた提案を実行すれば、すぐにでもカジノ経済がもたらした破壊的な危機を取り除くことができると私は信じている。日本のリーダーに、または日本の国民に、そのような知恵や意志、強さがあるだろうか。

私が考えるカジノ経済の弊害(4)

おわりに

残念だが、日本の政治家や官僚、そしてメディアの報道をみているとその期待はできず、日本はこれから、1930年代以降経験したことがないほどの厳しい景気後退期に入っていくだろう。そして数年前から私が危惧していたように、日本経済は今の半分の規模に縮小するかもしれない。

私の仕事は、800人の社員とその家族の健康と幸福を守り、製品を購入していただいている数千社のお客様に製品を有効に使っていただくためのサポートやサービスを提供して会社を存続させていくことである。

もし日本経済が大幅に縮小すれば、例外なくわが社の売上げも減り、社員へ給料を支払う能力も減少する。私はリストラをしないことを社員に明言してきたため、存続のために必要とあれば全社員の給料を削減することになる。その際は、社員にも明言したように、役員や役職者といった高い給料を得ている人から、累進的に削減していく。

しかし、今の給与水準を維持できなければ社員とその家族の健康と幸福を守れない、とは私は思っていない。そのために私は次のようなことを社員に提言した。

  1. 消費中毒を治す。私たち一人ひとりが経済の急激な崩壊、つまりそれによって売上げが減り、給料が減ることに対して、具体的に計画し、準備するためにできる最も重要なことの1つは、「広告」は私たちを健康や幸福に必要でないたくさんの商品やサービスを消費する消費中毒にするためのものだということを理解することである。今日私たちが消費するものの多くは、健康や幸福には必要ではないものであり、そればかりか、健康や幸福を損ねるものもある。もし我々がこのような不要なものを買う消費中毒から脱することができれば、たくさん所得があっても、不要な消費にほとんどを費やすよりも、少ない所得でも、不要な消費をしないで健康で幸福でいられるだろう。
  2. 衣食住を自分で行う方法を学ぶ。これまでお金を払って他者にやってもらっていたことを自分の手で行うようにする。我が社は2年前から農芸プロジェクトを開始し、社員に家庭菜園を推奨してきた。農園を借りる社員には年間2万円まで支援し、できるだけ自然に近い方法で家庭菜園を行って欲しいと思っている。また裁縫プロジェクト(洋裁、和裁)、日曜大工プロジェクトも計画している。もはや身の回りにはモノがあふれている。これからは他者にお金を払ってやってもらっていたことを、我々の両親、祖父母がしていたように、自分の手で行うのうだ。また、それらの時間を作るために、週4日間労働、在宅勤務、サテライト・オフィスなどの仕組みをつくることで、社員により柔軟な勤務体系を提供する実験を行っている。

これらの施策を着実に実行することで、たとえ会社の売上げが大幅に減り、給料が減っても、社員とその家族の健康と幸福を保つことができると私は信じている。

日本は今大きな危機に直面している。私はここで、その原因分析と不可能とも思われる解決策を提言した。この解決策を実行に移すための障害は、日本のリーダーたちの対米従属や拝金主義だけでなく、私たち一人ひとりの「無関心さ」にもある。

社会や日々の暮らしにその影響が及んできた今こそ、私たちが経済や金融の奴隷になるのではなく、その仕組みは本来どうあるべきか、私たちは何をすればよいかを真剣に考えるべきである。人は苦難を体験した時の方が成長を遂げる。金融危機はそのチャンスなのだ。