No.869 ニューディール政策

オバマ政権のグリーン・ニューディールが話題になっている。しかし忘れてはならないのは、いくらアメリカが太陽や風力などの自然エネルギーへの転換を急いだところで、現実に今、アメリカは石油中毒になっており、一国で世界全体の石油消費量の4分の1を使っているということだ。

ニューディール政策

アメリカはどう考えても自然エネルギーでは、その経済、社会、国民の生活水準を維持することはできない。少なくともグリーンを目指すならばまずは国民が低エネルギーのライフスタイルへの転換を真剣に考えなければいけないだろう。そうでなければグリーン・ニューディールの実態は公共事業を通じた雇用創出にしかすぎない。

そのニューディール政策だが、今アメリカではルーズベルト大統領のそれを失敗だったとする論調を流すメディアがある。つまり、高い課税や厳しい規制は、企業、そして経済にとって有害であり、ニューディールがアメリカの大恐慌を長引かせ、高い失業率を解決できなかった、アメリカの大恐慌を終わらせたのはその後の戦争であった、というのである。

たしかに、第二次世界大戦がアメリカの景気拡大に寄与したことは事実だが、ニューディール政策そのものを否定するのは、オバマ大統領が社会民主主義的な政策をとることをけん制するのが目的なのであろう。

1929年のウォール街大暴落をきっかけにアメリカは長い不況に突入した。1933年3月、ルーズベルトが大統領に就任した時は失業率が25%と、大恐慌のピークにあった。しかしルーズベルトが景気回復や雇用確保の政策をとり始めると、それまでの3年間ほとんど壊滅していた工業生産の月次データは、最初の3ヶ月で44%改善し、1936年12月には1929年の暴落前のレベルにまで回復したのである。

工業生産だけでなく、GDP、消費者支出なども、1936年には暴落前レベルまで同じように回復した。ではなぜニューディールが失敗だったといわれるかといえば、これでアメリカ経済は回復したと思ったルーズベルトが1937年5月に公的支出を削減したためである。それによってアメリカの景気は再び急激に悪化した。しかしその後、大統領が政策をもとに戻すと、また成長が始まりその成長路線のまま1941年、真珠湾攻撃から参戦となったのである。

市場原理主義に基づいて規制を撤廃し、政府の力を小さくしたい人々にとって、政府が経済に関与するニューディールはなんとしても阻止したい政策である。しかし破綻した大手金融機関のCEOが公的資金注入後も高額の報酬を得ているのをみれば、貪欲さには歯止めが必要なことは誰の目にもあきらかだ。雇用とインフラ、そして社会・政治的安定のための施策は政府の仕事なのである。

1月に発表されたアメリカの雇用統計では、13ヶ月連続で雇用者数が減少し、非農業部門では1ヶ月で59万8,000人が職を失った。グリーンであろうとなかろうと、ニューディール政策を早急にとらなければ、アメリカは1930年代を超える長い景気後退に苦しむことになる。

これはアメリカを模倣してきた日本もまったく同じである。国民の無関心さが困窮を生み出していることを自覚し、資本家ではなく大多数の国民のための政策をとることを政治家に求めなければいけない時なのだ。