7月半ば、アメリカの金融大手ゴールドマン・サックスは今年4~6月期決算において純利益が前年同期比65%増の約3,200億円と、四半期ベースで過去最高益だったと発表した。同社はこれで2四半期連続の黒字決算となる。
真のリーダーシップを
サブプライムからの金融危機で競争相手が減り、また外国為替や債券ビジネスの収入増によるものとみられ、従業員の賞与分として約6,000億円を内部留保するという。アメリカだけでなく世界が、この景気後退が一時的なものなのか、恐慌の始まりなのかと議論している中、どう考えてもこれは異常である。
2008年秋にゴールドマン・サックスに投入された公的資金約9,700億円がどのように使われたのか、また国有化された保険会社AIGが受け取った救済資金のうち、1兆円以上がゴールドマン・サックスに渡ったことなど、あまりにもひどい話だ。
先日、国有化された自動車会社ゼネラル・モータズ(GM)のエグゼクティブが記者会見で、GMは電気自動車でアメリカンドリームを復活できると語ったが、現実的に考えて、ガソリンから電気自動車に置き換えることは非現実的である。仮に大量生産できたとしても、今と同じ台数の自動車を走らせるには、原子力または石炭の火力発電所なしには不可能だろう。それともブッシュ政権は、電気自動車をゴールドマン・サックスの従業員のような一部のエリート用として普及させようというのだろうか。
オバマ大統領が真のリーダーとしてすべきことは、まずは過剰な自動車への依存をやめさせること。そして1941年にルーズベルト大統領がGMに自動車の製造を禁じ、兵器工場に転換させたのに倣い、GMの工場は路面電車や鉄道を作るようにすればよい。政治家や財界リーダー、メディアが無視しようとしても、いま、世界はそれくらい大きな変革のときにあるのだ。政治家は再び経済を成長させるなどという偽りの約束を国民にしてはならないし、また国民も、それを期待するべきではない。
消費が減退し、デパートの売上げといった指標は下がり、たしかに生活に影響は及ぶ。しかしそれは、必ずしも生活の質が低下するということではない。これまでは多くの人がサラリーマンになる道を選んだが、最近農業を選択する若者がでてきているのは、彼らが柔軟な精神を持っているだけでなく、より変化に敏感であるからだと私は思う。世界は常に変わりつつあるが、とりわけ今は、大きな転換期にある。
オバマ大統領が期待通りの強いリーダーシップをもってアメリカを真の変化の方向に導いていくことができれば、政府の残りの官僚や財界、メディアもついていくだろう。そしてそれはアメリカに追随している日本も変わるということだ。
エリック・ホールダー司法長官は、ブッシュ政権が隠してきた「テロとの戦い」政策について捜査を開始した。ついでにオバマ大統領は、彼にゴールドマン・サックスの空売りやインサイダー取引その他の捜査も命じればよい。真のリーダーシップを発揮して、腐敗しきった金融の闇を明らかにして欲しいと思う。