No.894 「年収6割でも週休4日」という生き方

このコラムを続けて読んでくださっている方は、ここ4、5年、私が取り上げるテーマに環境問題が多くなったことに気づいているかもしれない。

「年収6割でも週休4日」という生き方

今から20年前、初めての本『日本は悪くない』を上梓したのは、純粋に日本でビジネスを行う在日アメリカ人として、アメリカの一方的な日本叩きは敗者の喧騒にすぎないという確信からだった。心から「日本は少しも悪くない。悪いのはすべてアメリカだ」と信じていたのである。

それから10年たって2001年、『「日本人へ」最後の通告』をペマ・ギャルポ氏らと共著で、また2002年には『銀行は強盗、外資はハイエナ』を、ともに小学館から出版した。

すでに日本は、平成になってから一連の「改革」 - 規制緩和、民営化、所得税と法人税の減税、消費税の増税など - 実質の「改悪」によって破滅への道を歩み始めていた。とくに当時の小泉首相の郵政民営化に対する反論、そしてリストラや失業など経済問題が原因での自殺者の増加など、私の批判の矛先は与党自民党政権と財界に向けられた。先日、亀井金融・郵政担当相が、「日本で家族間の殺人事件が増えているのは、(大企業が)日本型経営を捨てて、人間を人間として扱わなくなったからだ」と述べ、日本経団連の御手洗冨士夫会長に「そのことに責任を感じなさい」と言ったというが、それは私が10年間言い続けてきたことだ。

2006年に日本国籍を取得してから日本に対する思いが少しずつ変化してきた。国籍がアメリカから日本になっても、私の容姿をみて日本人だと思う人はいないし、生まれ育ってからしみついている価値観は変わることはない。しかし確実に、私の視点は傍観者としてではなく、生活者へと変わってきた。地球の資源や環境について考え、人間の幸福とは何だろうと考えるようになったのである。

アメリカはイラクやアフガニスタンで戦争を続け、ウォール街は公的支援を受けながら経営者が巨額ボーナスを懐に入れ、日本における貧富の格差は広がり国民はリストラにおびえる。そのどれも私の力で解決できることではないし、評論家としての影響力は微々たるものだ。経営者である私ができることは、私が経営するこのアシストという会社で仲間である社員と共に、どのように自然環境や経済環境の変化に対応していけるかを考えることだと思ったのだ。

そんな折、小学館が本としてまとめて出版してくれることになりこの本ができた。第一章では私が経営者として考え、実行していること。そして本コラムにも掲載されている「私が考えるカジノ経済の弊害」が第二章となっている。このホームページを訪れてくださる読者の方にはすでに周知の内容も含まれているが、もし機会があればお手にとっていただければ幸いである。