昨秋、日本経団連は2008年の政治献金額を公表し、2008年に自民党政権へ27億円、民主党には1.1億円の政治献金をおこなったことを明らかにした。
政策動かす政治献金
リクルート事件などから政治献金は腐敗の温床という批判が高まり、1993年、経団連は企業献金の斡旋を廃止した。しかし2004年から再開して22.1億円(民主党には6千万円)、2007年には29.1億円(同8千万円)と、圧倒的に多くの献金を自民党に行なってきた。自民党が経団連の要求をそのまま政策に掲げてきたことは言うまでもない。
たとえば、現在もっとも大きな問題となっている雇用/失業問題の原因を作ったのは、経団連が非正規雇用を多数とする労働者の階層化を提言したことから始まった。それによってもたらされた格差社会に国民が反発し、自民党は多くの議席を失ったのだ。この雇用に関する規制を大幅に緩和させたことで急成長したある人材派遣会社の会長に、竹中平蔵氏が就任している。これは竹中氏が小渕内閣時から経済戦略会議委員として労働者派遣の自由化を旗振りしていた本人であるがゆえに、落選した自民党議員はそれこそ「天下り」だとほぞをかんだことだろう。
2000年には約33万人だった派遣社員は、2008年には140万人に増え、非正規労働者は労働者全体の3分の1を占めるまでになった。政策を実行したのは政府だが、 その指南をしたのは財界であり、その結果自民党の惨敗と格差社会がもたらされたのである。
金権主義のアメリカも同じである。昨年、不良債権で経営難に陥った銀行のうち、政府の救済プログラムで最も多くの資金援助をうけたのは、政治家へのロビー活動にもっともたくさんお金を使った銀行だったことが、ミシガン大学のロス・ビジネス・スクールの教授らの調査でわかっている。そして国民の税金で大銀行は救済されても中小・零細の企業には資金が回らず、アメリカでは倒産や失業が増え続けている。
規模の経済という言葉は、生産量が増えると費用が減少し、その結果利益率が高まることをいう。しかし実際は、企業が大きくなるとその資金力を使って政治献金を含むロビー活動を行ない、自分たちに都合のよいような法律や政策を国にとらせることができるというのが真実だと私は思う。年商1千万円の企業は政治家を買収できないが、100億円の売上げがあれば少しくらいの献金は痛くもかゆくもない。経団連のトップ企業から自民党に渡った27億円がそれだ。
自由主義経済を標榜する企業が真の自由市場で生き残れるか私は疑問に思っている。なぜなら財界はお金をバックに、直接、間接的に国家から援助を受けている。そして個人が事業を始めることを難しくさせるような規則を、大企業はその力を利用して政府に作らせる。小企業の経営者が資金繰りに苦労しているのもその理由からだ。
経団連は環境税の導入にも強く反対している。すでに地球温暖化防止に真剣に取り組んでおり、それで十分成果をあげているからだという。利益を上げるために簡単に社員を切り捨てている企業経営者のこの言葉を、私たちはどこまで信じることができるだろう。