No.908 日米安全保障条約

沖縄の名護市長選で、米軍普天間飛行場の移設反対を公約した稲嶺氏が勝利した。もしあなたの住む町に米軍飛行場ができることになったらあなたは歓迎するだろうか。

日米安全保障条約

沖縄の人だけでなく、私たち日本国民全員が「自分のこととして」この問題を考えた時、根本的な問題は基地移転ではなく、1951年、敗戦国である日本がアメリカと結び、1960年に改定された日米安全保障条約にあると思う。

先月、鳩山首相は条約改定50年にあたり日米安保体制を強化すると言ったらしいが、自民党から民主党に代わり、アメリカと惜別して独立国としての運営が行なわれるのではと願ったことは過ぎた期待だったようだ。鳩山政権が公約の「対等な日米関係」を実践しようとしているなら、ぜひ安保条約を読んで欲しい。

第1条には、「締約国は、国際連合憲章に定めるところに従い、それぞれが関係することのある国際紛争を平和的手段によつて国際の平和及び安全並びに正義を危うくしないように解決し、並びにそれぞれの国際関係において、武力による威嚇又は武力の行使を、いかなる国の領土保全又は政治的独立に対するものも、また、国際連合の目的と両立しない他のいかなる方法によるものも慎むことを約束する」とあるが、いつアメリカが国際紛争を平和的に解決しようとしたのか。ベトナムやイラク戦争をみるといい。またグレナダ、ニカラグア、ユーゴスラビア、そしてアフガニスタンでアメリカは何をしたのか。アメリカがこの条約の通りに振る舞い、武力による威嚇や行使を1960年からしていなければ、今頃世界はずっと平和で安全な場所になっていただろう。

日本政府がアメリカは日本を守ってくれるという主張は第5条のためだろう。「各締約国は、日本国の施政の下にある領域における、いずれか一方に対する武力攻撃が、自国の平和及び安全を危うくするものであることを認め、自国の憲法上の規定及び手続に従つて共通の危険に対処するように行動することを宣言する」

「自国の憲法上の規定及び手続に従つて共通の危険に対処するように行動する」とはどういう意味か。これは、どこかの国が日本の国土に攻撃をしてもそれがアメリカの国土や安全保障にとって危険でなければ、つまり共通の危険でなければ、アメリカは日本を守らないということではないか。または日本の防衛を手伝うことがアメリカの平和や安全を危うくすると思えば、もちろんアメリカが日本を助けることはないだろう。要はこの条文はきわめて曖昧な約束なのだ。

この安保条約で明確なのは第6条だ。「日本国の安全に寄与し、並びに極東における国際の平和及び安全の維持の寄与するため、アメリカ合衆国は、その陸軍、空軍及び海軍が日本国において施設及び区域を使用することを許される」。だから基地があるのだ。

条約の内容を議論もせず、なぜ政治家やメディアはアメリカが同盟国として日本を守ってくれるといい続けるのだろう。そして沖縄の基地問題、自然破壊、米軍による犯罪を他人ごとのように放置しつづけるのだろう。

安保条約はアメリカが日本を軍事占領するための条約にすぎない。それを読めば誰でもわかるはずだ。

外務省ホームページ

http://www.mofa.go.jp/mofaj/area/usa/hosho/jyoyaku.html