No.910 インターネットの検閲

総務省の調査によると、日本のインターネット利用者数は約9,091万人、人口普及率は75.3%にもなった。ここ数年間で、ビジネスだけではなく個人の生活にもインターネットは欠かせない道具となったようだ。

インターネットの検閲

流したい情報をメディアが一方的に決められるテレビと違い、インターネットは誰もが情報発信でき、読み手は自分から情報を取りに行く。そんな自由なインターネットの世界も、ここにきてさまざまな検閲がかかってきた。アメリカ連邦捜査局(FBI)はインターネットのサービス・プロバイダーに対して、顧客がどのウェブサイトを訪問したかを記録し、それを2年間保管するよう求めた。これは児童ポルノの犯罪捜査のためだといい、FBIだけではなく全米各州の警察捜査員もこれを要請しているらしい。

また今月、インターネット上での検索エンジンなどを提供するソフトウェア会社、Googleが、インターネット調査会社としてアメリカ国家安全保障局に協力し、中国での企業スパイ攻撃の調査を行なうことになった。これについてロイター通信は、インターネットでGoogleとNSAが組んで諜報機関活動を行なえば、世界で最も強力な電子監視組織になるだろうと報じている。

Googleはいろいろな意味で社会に問題を提起している企業だと思う。先ごろ、同社の技術を担当する幹部が「オープンの意味」という文書を公式ブログに公開した。そこで述べられていたことの一つは、技術をオープン、すなわち一般に公開することは更なる技術革新につながるというものだ。これには私はまったく同意する。人類が今日まで進歩したのは現代人が無から築いたのではなく、過去の知識や知恵を利用したからで、知的所有権の保護などというものは200年前には地球上に存在しなかった。100年前でもほとんどの国になく、あったとしても保護するのはその法律が存在する国の国民によって作られたものだけだった。著作権、特許、商標などなかったが、たくさんの科学や文学、音楽、その他の知的な財産が発明、創造され、私たちは今その恩恵を受けているのだ。

もう一つのオープンとしてGoogleは収集している検索、閲覧履歴などのユーザ情報について、何を収集しているか明らかにし、ユーザに価値を提供するためにそれらを活用し、その情報の削除などのコントロールはユーザに委ねると述べた。FBIへの協力は、この集めた情報をアメリカ政府の諜報活動に使うということだろう。FBIはこれまでにも、テロとの戦いを理由に通話記録を集めるなど、盗聴や個人情報収集に関して違法行為を行なってきたが、今後はGoogleのような企業を使ってインターネット上でも利用者の検閲を始めるということだ。

電話、コンピュータ、インターネット、現代人のインフラとなっているこれらの道具はすべてアメリカ政府の手の内にある。私は以前から「エシュロン」とよばれる世界規模の通信傍受網によって
日本の政府・企業の機密情報は米国政府(そして米国企業)の手に渡っていると述べてきたが、スパイ小説の読みすぎだと一蹴されてきた。しかし事実は、アメリカはジョージ・オーウェルの描いた戦争を続ける独裁国家、『1984年』にでてくる大国ときわめて酷似した国になっているのである。