No.915 アメリカ帝国の衰退

軍事帝国主義国家アメリカの経済が急速に縮小していることはリーマンショック以後、特に明らかになってきている。ローマ帝国、イギリス帝国と同じように、アメリカも衰退の道をたどることは間違いなく、アメリカの場合は、かなりの確率で第三世界の国のレベルにまで堕ちる可能性は高いと思っている。

アメリカ帝国の衰退

第三世界の国は工業製品のほとんどを海外から輸入し、代わりに天然資源を輸出している。また、第三世界の国の経済は国内資本が不足しているため、外国からの資本に依存している。まさにアメリカはこの条件に当てはまる。そして第三世界のもう一つの特徴は医療などに問題があることだ。これも、先進国の中でアメリカの平均寿命が最も短いことは偶然ではない。

特にアメリカでは、所得格差の拡大からここ20年間で富裕層と貧困層の平均寿命に大きな差ができつつある。例えば、貧しい黒人男性の平均寿命は66.9歳だが、裕福な白人女性は81.1歳と、14歳以上も離れている。また乳児死亡率も他の先進国より高く、これは高度医療設備がありながらも医療保険がないために、貧しい家庭では乳幼児の病気に対して何もできないという格差の現われであろう。

その一方で、貧しい第三世界の国々と大きく異なる点が少なくとも2つある。一つはエネルギー資源の消費量が世界のどの国よりも格段に多いこと、そして、どこよりも多く軍事にお金をかけ、複雑で高度かつ高額の兵器を大量に保有していることだ。そしてこの2つが、アメリカ帝国が没落に向かう理由と深く関連している。

アメリカが世界に誇る軍隊を持っているのは国民の健康や安寧のためではない。帝国がいつの時代にもそうであったように、それは帝国を支配する者が富を手にするためであり、そのために世界のあらゆるところに軍隊を派遣している。そしてその結果として、アメリカ国民は世界人口の5%に過ぎないにもかかわらず、世界の資源の3分の1を使い続けることができるのだ。

今から100年前、イギリス帝国は世界中から富を集めることで国民の生活水準をあげた。同じように帝国主義のアメリカは今、大量のエネルギーを使って高い生活水準を保っている。しかしこの途方もない贅沢な暮らしをしているアメリカも、イギリスが衰退して帝国の地位をアメリカに引き渡したように、水準を徐々に下げざるを得なくなってきている。帝国を維持するコストは、それがもたらす便益をもはや大きく上回り、また、ますます格差の広がる国内の国民から不満の声が高まってくるからだ。

中国へのアヘン戦争、イギリス東インド会社の拡大からインドを支配下におき、エジプトの実質支配、さらにはカナダ、オーストラリア、南アフリカといった自治領を持つイギリス帝国が衰退することを、誰が1910年に想像したであろうか。

それから100年たった2010年、同じようにアメリカ帝国の衰退は誰にも止められない。もちろん帝国の属国である日本であっても。そしてそれは、われわれも身の振り方を改める時期にあることを意味している。