日本の江戸時代にあたる西暦1800年頃、約10億人だった世界人口は、1900年には2倍の20億人に増え、それが今では約68億人にも増加した。人間の数が異常な速さで増えていく一方で、他の生物においては未曾有の大量絶滅が起こっている。
グローバルからローカルに
温暖化や戦争など、地球が直面している問題のほとんどは人間がその原因を作っている。人口増加も、現在の経済の仕組みにおいては、たとえ有限である資源がなくなることがわかっていても、一部の資本家の利益を増やすために大量生産を続け、それを消費する人間を必要とする。食料もエネルギーも完全に諸外国に依存している日本で、政府が子供手当てを支給してでも子供の数を増やそうとしているはそのためだ。そして人間が増えるほど、他の生き物にとって地球は住みにくい場所となる。
この春、自宅の庭にミツバチを集めるために蜂巣箱を設置した。農薬や電磁波など、原因はいろいろ言われているが、多くの国でミツバチが減少の一途を辿っている。ミツバチははちみつを作るだけでなく、花や樹木、家庭菜園の野菜まで、多くの植物の受粉を助けており、いなくなることは食料生産に打撃を与える。
気候変動や戦争を止めたいと思っても、私たち個人の力は微々たるものだ。だからといって、無関心を装ったり、絶望して何もしないのではあまりにもさびしい。確かに私を含めて多くの人は、仕事や生活に忙しくて積極的な反対運動や活動に参加することは難しい。しかしそれでも、自分の生活の中で工夫していけば、雨粒が岩を削っていくような変化につなげられると思う。
その一つが、経済をグローバルからローカルにシフトすることだ。少数の大企業、多国籍企業から、経済を地元企業の手に取り戻すのである。特に食料は誰でも毎日必要である。それを「地産地消」にすれば、社会や環境にすぐに大きな影響がでるだろう。
グローバル経済の目標は利益だから大量生産、大量消費を求めるが、ローカルになれば農業は多様性に向かい、それは植物や動物にとっても好ましい。また食料生産がローカルになれば、利益は中間の企業ではなく直接農家にいき、農家で働く人の所得が増えれば直接地方経済の活性化につながる。
そのような大きな構図だけでなく、なによりローカルで作られたものは新鮮で栄養価も高いし、保存料や添加物も少なく健康に良いだろう。特定企業による食料支配が阻止できれば、先進国のために穀物を作っている貧しい国も自分たちの食べ物を作ることができ、世界規模で飢餓も減るだろう。
もちろん、これらの草の根的な活動を成功させるためには国家、国際レベルでの政策転換は必要だが、まずは家庭菜園や地元で採れた作物を購入するといった個々人の地道な行動が、世界に多様さや豊かさを取り戻し、真の持続可能なコミュニティの実現につながるのだ。
我が家の蜂巣箱にどれほどのミツバチがくるかはわからない。しかし遠い昔から人間と共に生存してきたミツバチの仕事場である自然環境を人間の手で破壊し続けることだけは止めなければいけないと思う。