No.920 アイスランドの火山噴火

4月14日、アイスランド南部にあるエイヤフィヤトラヨークトル(Eyjafjallajokull)氷河で火山が噴火した。これによって氷河の一部が溶解して大規模な洪水が発生し、また地域一帯で多数の地震が観測され、住民が避難した。この氷河付近で最後に噴火があったのは1823年だという。

アイスランドの火山噴火

火山噴火のあとのニュースは、欧州で飛行機が欠航し、それによって日本にも影響がもたらされたといったものが多かった。ただでさえ財政支援を必要としている航空業界、リーマン・ショックのあとの景気後退から抜けきらない欧州市場の経済など、先行きは火山灰に覆われた空のようである。

しかしそのような経済的なことよりも、さらに深刻な問題は自然界への打撃である。アイスランドの火山噴火は日本から遠く離れた出来事ではあるが、長期的にみて地球規模の気候や生態系に大きな影響を及ぼすことは間違いないからだ。

実際、現時点でも完全に沈静化しているというニュースは聞かれないし、火山灰の噴煙は宇宙から確認できるほど大量に噴き出したため、それがもたらす影響は正確には誰にもわからない。世界保健機関(WHO)はヨーロッパ全域に対し、火山灰が降り始めたら外出を控えるか、マスクを使用するよう呼びかけているという。火山灰は細かいガラス状の砂やちりの粒子であり、これを吸い込むと眼、鼻、のどで炎症をおこし、肺の奥まで入れば呼吸障害に見舞われることもあるからだ。

それにしてもWHOの呼びかけは新型インフルエンザの時と比べるとそっけない。もちろん予防注射もない自然災害だから仕方ないかもしれないが、インフルエンザの時に、あれだけパンデミック(世界的大流行)だと煽って、警戒水準(フェーズ)を最高度の「6」に引き上げ、副作用のある予防注射やタミフルを人々に推奨した同じ機関とは思えない対応である。WHOは世界の健康のための機関のはずだが、いかにしたら健康を維持できるかというより、むしろ医療や医薬品を普及・推進することに力を入れている団体なのかもしれない。

アイスランドの火山は前回は1821年から2年間噴火が続き、毒性のある火山灰のために牛や羊だけでなく、多くの人が亡くなった。また1783年の噴火は、火山ガスが成層圏まで上昇して北半球全体を覆い、気温の低下や冷害につながったという。(同年、日本でも浅間山が噴火し冷害が発生している。)現時点では、アイスランドは噴火の影響が差し迫っているものの、今後世界の気候にどこまで影響を及ぼすかは、まだわかっていない。

アメリカのサブプライム問題のあと、アイスランドは金融危機に陥り2008年にはいくつもの銀行が国有化された。つい先ごろ、その国有銀行に対する公的資金投入について、国民が外国の大口預金者を政府が救済することに反発して国民投票が行なわれ、銀行の負債を国民に補填させる提案は圧倒的多数で否決された。

金融が国境を越えて他の国に影響を及ぼす以上に、火山噴火が地球の気象にもたらす変化は計り知れない。地球温暖化が一転して寒冷化になったからといって喜んではいられないのだ。