No.925 軍需産業に操られる

スウェーデンのストックホルム国際平和研究所が2009年の世界の軍事支出を発表した。それによると、金融危機で景気後退や財政難に見舞われる国が続出しているにもかかわらず、軍事支出は前年比実質約6%増と、推定総額1兆5,310億ドル(約140兆円)に達したという。トップはもちろんアメリカで6,610億ドル、次が中国で1,000億ドル、日本は518億ドルで6位だった。

軍需産業に操られる

景気後退にもかかわらず軍事費が増額しているのは、各国が世界的・地域的影響力を維持したいためだろうと同研究所は分析しており、またアメリカが軍事費を前年比で約500億ドルも増やしていることについて、「ノーベル平和賞受賞者(オバマ大統領)が記録的な水準の予算を軍事に費やしている」と批判した。軍事支出に依存している米国企業にとって、アメリカは不景気知らずの黄金時代なのかもしれない。

そんなアメリカに都合のよい争いの種が、日本の近くで起きた。韓国海軍の哨戒艦が北朝鮮によって攻撃されて沈没したというのである。アメリカ政府はさっそく黄海に原子力空母を派遣して韓国海軍と合同軍事演習を行う予定だという。北朝鮮を犯人と断定したのは、韓国と米英豪スウェーデンで構成する「軍民合同調査団」の調査だが、北朝鮮側は否定しており、逆に物証を示すよう要求している。

ほとんどの日本のメディアも北朝鮮の犯行だと報じ、同時期に鳩山前首相が普天間基地の県外移設を断念したのも、不穏な朝鮮半島情勢下においてはアメリカの軍事力が不可欠だとする声が出てきたからと言われている。辞任後、米紙などは「沖縄の米軍基地問題で日本の首相が辞任」と一斉に報じ、飛行場を最低でも県外に移設するという約束を破ったことが国民の信頼を失わせた、と結論づけたが、多くの国民から「変化」の期待を受けて就任した鳩山も4年間で4人目の総理大臣辞任となってしまった。

振り返ると就任時からオバマ大統領は鳩山氏と距離を置いていたし、アメリカ主導型のグローバリゼーションを批判する鳩山氏をワシントンは好ましく思っていなかった。鳩山氏の言う対等な日米関係などに対しても聞く耳をもたなかったが、この沖縄基地問題でいよいよ静観を止めたのかもしれない。その結果、沖縄県民を裏切ることもワシントンに逆らうこともできなかった鳩山氏に残ったのは辞任という道しかなかった、と言えないだろうか。つまり、日本の有権者は変化を託して民主党政権を選んだが、アメリカ政府が日本の変化を望まない限り、または極東地区におけるアメリカの政策が変わらない限り、日本が変わることはないということである。

失業や財政赤字が拡大する中、オバマ大統領がブッシュ時代より多くの軍事費を支出し続けるのは、日本の首相がアメリカに操られているように、オバマが軍需産業に操られているからである。第二次世界大戦が終わったあとも世界中で戦争を続けているアメリカは、こうして戦争の理由を作り続け兵器会社を潤していくのである。