No.928 日本財政は借金漬け

自民党政治からの脱却を叫んで変化を強調した民主党だったが、ほとんど変化がみられないばかりか、菅首相は財政危機に陥ったギリシャを例に出して、日本も消費税を増税しなければギリシャの二の舞になるとさえ言ったという。(8月4日、首相は10%発言を事実上撤回したというが。しかし選挙前に増税を口にしたこと自体、菅首相の真意がわからないのだが、そのことについてはまた改めて書きたい。)

日本財政は借金漬け

2010年度の政府予算は92兆円を超えた。これは当初予算として過去最高で、このうち国債発行額は44兆3,030億円。民主党政権の借金は自民党時代を超える金額で、このままいくと日本が積み上げてきたグロスの一般政府債務はGDPの200%以上にもなりうる。つまり、日本は1年間に作り出すすべての価値を合計したものの2倍以上の借金を背負っているということであり、財政危機のギリシャの債務が130.2%であることを考えると、日本の深刻さがわかるだろう。

ギリシャの国債の保有者のほとんどが海外投資家であるのに対し、日本は9割以上が国内資金で買われていること、EU加盟の条件を満たすためにギリシャは財政赤字を隠してきたことなど状況は異なるが、日本の財政が借金漬けであるという事実に変わりはない。ではそもそもなぜ、国は国債を発行して借金をしなければならないのだろうか。

「税収が減って歳入が足りないなら歳出の不足分は借金しかない」というのがその答えだろう。だが私の疑問はそういう意味ではなく、借金をするとしても、なぜ「政府がマーケット、おもに銀行からお金を借りなければならないのか」ということだ。

その理由は、政府が自らお金を作り出すのではなく、お金をどこからか借りているためである。つまり、政府が貨幣を発行する権利を放棄し、その貨幣発行権を民間銀行に委託しているのだ。多くの人はお金は日銀(中央銀行)が作っていると思っているかもしれないが、日銀が作っているのはごく一部で、日本経済で流通しているお金の80~90%は、民間の銀行が「貸付」の形で作ったものである。つまり民間銀行は、自分でお金を創造し、それを貸し付けて利子で儲けるという特権が与えられている。

そして経済がつねに右肩上がりで成長し続けなければならないのも、この貸し出しに対してつく利子のためである。返済金額は貸付金額を常に上回る。この上回る部分が利子で、金融業者が無から生み出しているものなのだ。

菅首相は、消費税増税と合わせて法人税を減税するというのだが、日本の大銀行は過去の損失を繰り越して黒字と相殺できる仕組みを利用し、その法人税すら10年以上払っていない。しかしこれ以上に銀行が享受しているのは、お金を無から作り出すこと、それによって利子という利益を手にすることができるという特権である。

この民間銀行がお金を作る仕組みは「信用創造」と呼ばれる。銀行に与えられているこの特権が、増税を必要とし、景気を左右し、私たちの暮らしに重大な影響を与えている。財政危機を解決するには、まずお金を作り出す特権を政府自身の手に取り戻すことだ。国の借金をこれ以上増やさず、また大幅な増税で国民を苦しめることもしないで財政再建をはかるにはそれしかない。