No.938 戦争犯罪と思わぬ米国

日本におけるアメリカに関するニュースといえば金融危機など経済に関することが多いために、アメリカが今でも戦争をしている国だということを忘れがちである。

戦争犯罪と思わぬ米国

アフガン侵攻から来年で10年が経過し、2003年に大量破壊兵器を理由に攻撃を開始したイラク戦争は戦闘部隊が撤退した今も5万人以上の兵士、多数の民間軍事会社の警備員が武器やヘリコプター、防弾車まで所有してイラクで活動している。2011年末にイラクから完全撤退するというオバマ大統領だが、撤退後も米軍基地を維持していくというから今と同じ状態が続くことは明らかだ。

第二次大戦では日本に原爆を投下し、東京やドレスデンなど多くの都市を空爆で破壊した。それ以降も韓国、グアテマラ、キューバ、ラオス、ベトナム、カンボジア、グレナダ、リビア、エルサルバドル、ニカラグア、パナマ、イラク、ソマリア、スーダン、ユーゴスラビア、そしてアフガニスタン、イラクと、アメリカは常にどこかを侵略したり攻撃し続けてきた。戦争はもはやビジネスで経済の一部に組み込まれており、アメリカ人のモラルでは本土が戦場にならない限り、大きな問題ではないのかもしれない。

アメリカのモラルといえば、先日、アフガニスタン駐留米軍の機密文書がインターネットに流出し、イラク駐留米軍情報部門に勤務していたマニング上等兵が犯人と特定されたという。上等兵は米軍ヘリコプターがバグダッドでイラク民間人らを誤射する映像ビデオを「WikiLeaks」という匿名による政府や企業に関わる機密情報を公開するウェブサイトに掲載したとして、すでに逮捕、拘留されている。

ビデオ公開されたヘリコプター攻撃で殺された人々の肉親は、米軍の行為は戦争犯罪で、それを暴いたマニング上等兵の行為は正義だとして拘留を批判しているが、アメリカ政府は情報漏洩の防止に必死である。ある議員は、軍の機密を漏洩したマニング上等兵の行為は死刑だと言っているという。アフガニスタンやイラクでのアメリカの残虐行為を「暴露する人」を極刑にというのは、侵略戦争を批判する人々への恫喝ともとれる。

アメリカ政府はもはや自分のとる行動が例えどんなに恥ずべきものでも戦争犯罪だとは思っていないようだ。国内に向けても同じであり、今政府は警察の暴力を録画すると有罪になる法律を作ろうとしている。インターネットのサイトで警察官が職権乱用してる場面を投稿する市民が増えているからだ。

先住民族を大量虐殺してできたアメリカの国の成り立ちを考えると、力ある者がすべてのルールを決め、支配するための戦争は、その倫理、道徳に反するものではないのかもしれない。

自民党に続き、民主党政権もそのアメリカに資金を援助し続けるだけでなく、軍需産業を潤して経済を活性化させるためとして、武器輸出三原則を見直そうとしている。それが平和憲法を持つ日本が作った兵器で他国の罪なき人々が死んでいくのだということを、アメリカ並みのモラルを持つ日本の政治家にはわからないらしい。