本来秘密であるべき公電が内部告発によって暴露され、釈明に大慌てのアメリカ政府だが、そんなオバマ政権が今必死に作ろうとしている法律がある。
通信傍受を可能にする法案
それはフェースブックやツイッターなどのソーシャル・ネットワーク(SNS)、やスカイプなどのピア・ツー・ピア通信を含むすべてのインターネットサービスに対して、司法当局による通信傍受を可能にする技術の導入を義務づける法案である。
2001年9月11日の以後、アメリカでは裁判所の令状がなくても国内の外国人、また米国民に対しても国際電話および電子メールの通信の盗聴・傍受を許可をしていたことがわかっている。さらにそういった盗聴が外国情報監視法に抵触するとわかると、その後、違法行為をさかのぼって免責できるように法律も改正された。
アメリカ政府の盗聴の目的は、まずは反戦団体など反政府の人々を監視することである。軍事費削減を打ち出しても、2008年の軍事費が6,070億ドルと、世界の軍事費の43%をアメリカ一国で占める戦争中毒の国家で、戦争に反対することは、反政府、テロリストと同義にも等しいのだ。
今回の法案は、技術革新によって新しくでてきたインターネット技術をも網羅する規制を作るためだ。個人でも企業でもインターネット・サービスへの依存度は高まっている。この法案が可決されれば、アメリカ国内にあるインターネット・サービスや、今流行の「クラウド・コンピューティング」を利用する場合にも、その情報はいつでもホームランドセキュリティ省、国家安全保障局など政府の諜報機関によって覗かれていることを考慮しなくてはならなくなるだろう。
またCIAはGoogleと共に、新しい技術を提供する新興企業に投資している。Recorded Future社という、インターネット上の活動をリアルタイムで監視する技術を開発する会社である。無数のウェブサイト、ブログ、ツイッター等を監視し、データマイニング技術を使ってその人々や組織、行動の間の関係を分析し、将来を予測するという。
この技術は、一つ一つの出来事について誰が関わり、どこで発生し、いつ終わりそうなのかを分析し、その後、そのさまざまな情報をグラフ化して出来事ごとの「動き」をオンラインで表示するというが、どんなユーザが何の目的のために使うのかは明らかにされていない。しかしCIAがこの技術を使うとなればテロリスト探しに使われることは間違いない。
未来を予測して、現時点で犯罪を犯していないのに刑務所に入れることはできないが、問題はこの技術を民間企業が採用した場合だ。Datamation誌は、「犯罪予防」という概念が近いうちに企業の人事部門や社員管理に採用されると記している。
あなたがよく見るインターネット・サイトなどの情報をもとに、未来予測ソフトが「この社員は将来、会社の利益に反する行動をするだろう」と判断すれば、あなたは解雇されることすらあり得る、ということだ。アメリカはまさに、オーウェルのビッグ・ブラザーが支配する世界になりつつある。そうなれば、ウィキリークスで暴露されたような、政府に都合の悪い情報が一般国民の目に触れることは、完全になくなるのだ。