日本の政治は参院選で民主党が大敗して「ねじれ国会」となったが、昨年11月の中間選挙の結果、アメリカも、下院は共和党が圧勝という「ねじれ」の状況に入った。アメリカは大統領制なので様子は異なるが、日本と同様、「チェンジ!」を国民に期待させながら、2年間何も変わってはいないことに対するアメリカ国民のいらだちが選挙結果につながったようだ。
日本のアメリカ化
オバマ大統領が就任した時に何も変わらないだろうと思ったのは、金権主義のアメリカで、資金提供源であるウォール街や軍需産業の思惑に反するような政策をとる人物が、初めから大統領候補に選ばれるはずはないというシンプルな理由からである。オバマは「イラクからの撤退」もせず、グアンタナモ刑務所も閉鎖せず、アフガニスタンでの戦争を拡大し、新たにパキスタンとイエメンとの戦争も始め、イランを脅迫し、軍事基地でロシアを囲い始めた。
アメリカ国内に目を向けると、突出する軍事費による予算削減の影響をうけ、人々は仕事と収入を失い、家は立ち退きにあい、子供たちは将来への展望も希望もない状況になりつつある。しかし選挙でいくら国民が怒りをあらわにしても、金権主義で選ばれた召使いを代えることはできても、政策や、金権主義そのものを変えることはできない。アメリカを動かしているのは政府ではなく、政府を買収した大金持ちであり、一般国民が選挙で誰を選ぼうと、大統領はその「雇われ人」にすぎないからだ。
かつてアメリカの二大政党はそれぞれ異なる利権を代表していた。民主党は労働者の代表で、政策は社会保障、健康保険、フードスタンプ、失業保険、教育、公民権などが中心で完全雇用の実現をめざし、そのためならある程度のインフレは受け入れるという論点だった。一方共和党は企業を代弁し、小さな政府を目指して社会保障費を減らし、さらなる規制緩和の推進がそのゴールにあった。
クリントン政権時代から企業が製造拠点を労働賃金の安い海外へ移転したことで、労働組合の力が弱まり、民主党への政治献金が大幅に減少した。そのため両党ともウォール街や軍産複合体、石油や製薬会社、アグリビジネスなどから政治献金を受け、選挙における政策はもはや重要ではなくなった。
今、日本も同じ状況になりつつある。自民党も民主党も政策を決めているのは企業であり、また広告主であるためにメディアもすべてコントロールされてしまっている。
昨年11月、北朝鮮による延坪島の砲撃事件がおきた。しかし北朝鮮にとって、自分の家の隣でアメリカと韓国が合同軍事演習を行うこと自体が大きな脅威と感じて当然である。さらにこの合同演習には日本の自衛隊も参加していた。露骨な軍事的圧力を目的としたアメリカ韓国共同軍事演習に参加すること自体、平和憲法に違反している。しかしそれを主流メディアが報じないのは、メディアのスポンサーである財界、すなわち日本経団連が、武器の輸出を制限した「武器輸出三原則」の見直しを求めていることとつながってくる。
日本の権力エリートもアメリカのような戦争国家を目指している、と結論づけたくはない。しかし真実を報道することなく、一般大衆をテロや北朝鮮の核の恐怖で不安に陥れていることを考えると、日本の更なるアメリカ化、すなわち戦争へ突き進むというシナリオは少しもおかしくはない。