12月13日、民主党菅首相は法人税を5%引き下げると発表した。消費税を10%に引き上げ、法人税率を20%台に引き下げると公約を掲げてきたのは自民党だが、なんということはない、民主党も政権をとった途端、企業に減税、一般国民に増税と、自民党と同じ路線となった。
法人税減税
金融危機のさなか、アメリカの大統領選挙で「変化」を叫んだオバマ大統領が国民に支持されたように、昨年夏、自民党の政治に嫌気がさした日本国民は民主党を選んだ。あたかも日本もアメリカのような二大政党制となり、政治が変わると国民に思わせる出来事だった。
しかし、残念ながら日本の民主党もアメリカのオバマ大統領と同じく、何も変えることはしなかった。日本もアメリカ同様金権主義となり、政治家にお金を提供しているのが財界と富裕層だからである。これまで自民党を支援していた財界が民主党に資金援助を行い、民主党もそのお金に頼るようになった。去る10月に、企業や団体からの政治献金の全面禁止を公約に掲げていた民主党が、あっさりそれを破って党本部への政治献金を再開したのはその合図である。そのお返しの、法人税減税である。
菅首相は企業に減税をすれば日本経済が元気になり、そして減税分を企業は国内に投資したり、雇用を増やしたり、または社員の給料を増やすと、信じているのだろうか。
法人税減税で恩恵を受けるのは、配当の増加という形で株主、またボーナスという形で経営者といった、すでに十分なお金を持っている人たちである。すでに裕福な人の所得を増やしても日本の消費は増えることはない。日本のGDPの6割近くを占めるのは民間消費である。それを増やすために法人税税収5%引き下げに相当する1.5兆円を減らすのなら、逆累進性である住民税や消費税を減税するべきである。なぜなら多くの国民は収入のほとんどを消費に充てている。大多数の国民を減税すれば、民間消費は必ずや増えるからである。
民主党は野党時代に米軍に対する「思いやり予算」にも反対していたが、政権を握った途端方針を転換し、来年4月以降も現行の予算規模(1,881億円)を維持するとしている。これら一連の政策は、国民の生活の安定や平和維持ではなく、アメリカを市場とする日本の輸出大手企業のためのものだと言うことができる。
日本の失業者数は330万人を超えている。法人税減税と引き換えに雇用を拡大するという義務も責任も企業にはない。大学生の就職内定率も、調査を開始した1996年から過去最低になったという。資本主義経済において失業者は「自己責任」だといわれるが、大学を出たばかりの若者たちに、それは当てはまらない。
完全雇用の保障をいう責任を負っているのは政府だけであり、そのため以前から私は政府が最後の雇用者となるべきだと主張してきた。富裕層に減税をするのではなく、最低賃金で国が失業者を雇うほうがよほど経済は活性化する。繰り返すが、『戦争特需』を狙って中国や北朝鮮の脅威を煽り戦争への道を突き進ませるという財界のシナリオにだけ乗ってはいけない。