No.944 “警察国家”のようなアメリカ

昨年、民間告発サイト「ウィキリークス」がアメリカの外交当局の機密文書をインターネット上に公表したという事件があったが、これを受けて米空軍は施設内のネットワークからこうした文書を掲載したメディアのホームページへの接続を遮断する措置を取ったという。

“警察国家”のようなアメリカ

ウィキリークスからの機密を掲載したのは米ニューヨーク・タイムズ紙や、英ガーディアン紙など20紙以上あり、米陸軍や海軍では遮断はしていないが機密文書を閲覧しないよう命じる措置をとっているという。

昨年からアメリカ政府が強化しつつある規制についてとりあげているが、いよいよアメリカは、国民から自由を奪う“警察国家”としての様相を深めつつある。昨年11月には、FBI高官がグーグルなどのハイテク企業数社の経営トップを訪問し、インターネット・ユーザへの盗聴を政府が簡単にできるような提案をしたとニューヨークタイムズ紙は報じた。

オバマ政権は“盗聴法改正法案”を準備しており、そこではインターネット向け通信傍受を強化し、そこには日本のユーザも多く利用しているフェイスブックやスカイプのようなP2P電話も含まれる。つまり、日本国内の相手との会話でもアメリカで傍受される可能性があるということだ。今のアメリカの法律では、裁判所の許可なしに盗聴することはすでに合法なのである。

スパイ小説のようだが、FBIがすでに通信設備をポイント・アンド・クリック操作で簡単に盗聴できる高度な監視システムを開発していることは2007年にワイヤード誌が報じている。コンピュータのIPアドレスやそれを所有する会社、ユーザ名、最後に訪問したURLなどFBIは簡単に集められるのだ。

テロとの戦争から始まった(実際はそれ以前から諜報行為を行っていたが)アメリカ政府の国家安全保障という名の下で行うスパイ行為はまた、大きなビジネスにもなる。“The Register”によればグーグルは政府から要求されたユーザの情報開示について、一人あたり25ドルの手数料を請求しているという。(Yahooは29ドル、マイクロソフトは無償で応じているとのこと。)政府が払うということは、結局はアメリカ国民が負担するということだ。グーグルやヤフーのメールは無料でも十分利益を得られ、電話会社の場合は盗聴すると政府に2,000ドル請求するともいうのである。こうして、サイバー・セキュリティはこれからも成長が見込まれる市場となり続けるのだろう。

異常な国民への監視体制、そして、ウィキリークスの創設者であるアサーンジ氏をアメリカのバイデン副大統領は「ハイテク・テロリストのようだ」と非難するなど政府の内部文書情報が暴露されたことでヒステリックな反応を起こすこと自体、アメリカ帝国がこれまで掌握していた情報支配を失う危機に直面しているからにほかならない。

アサーンジ氏は新年にアメリカ大手銀行の機密文書を暴露する考えを表明しているが、それがどのような形でなされ、どんな影響が及ぼされるのか、そしてそれに対してアメリカ政府がどう対処するのか、新年早々、今年もインターネットを舞台に戦いが華やかに繰り広げられそうである。