No.945 最高水準の食料価格指数

新年早々、国連食糧農業機関(FAO)は昨年12月の食料価格指数が過去最高水準であったと発表した。昨年12月の食料価格は前年同月比で25%上昇、特に中国で需要が拡大していること、またロシアで起きた干ばつも影響しているという。

最高水準の食料価格指数

以前、このコラムでゴールドマン・サックスが食料を投機対象とし、「コモディティ・インデックス」という商品にしたため、小麦やとうもろこしが金融投資の対象となったと書いた。2008年にも世界の食料価格が高騰し、日本でも食品の価格が上がるなどしたが、世界では10億人以上が飢餓に直面している。FAOの発表は、価格上昇が止まらなければ、再び2008年のような暴動が起こることを示唆している。食料の多くを海外に依存する日本にとっても、今後影響が出ることは想像に難くない。

日本の農業の現状をみると、食料自給率は年々低下する一方で約4割の水田で米の生産調整を行っている。日本の農業就業人口は300万人に満たず、半数が70歳以上だという。その上さらに、菅首相は「開国」と称して環太平洋連携協定(TPP)加盟による貿易自由化を推進させようとしているのだ。

そんな状況の中、野村ホールディングスが農業ビジネスに参入し、農業に参入したい企業にコンサルティングやファイナンスを行うことで地域活性化および食料、環境、エネルギー問題の解決に取り組み、またその子会社は実際に農産物を生産するという。国家の安全保障にかかわる農業は本来政府の仕事であるべきだが、その政府はTPP導入で日本の農業を危うくしようとし、そして全てを利益中心の民間に任せようとしている姿がここでも明確にあらわれている。

もう一つ興味深いのは、石油で財をなしたロックフェラーも“脱石油”の農業を目指しているということ。ロックフェラー財団は気候温暖化の原因とならない農業開発を支援するために資金援助をするとしているが、それ以外にも、ニューヨーク郊外にある広大な敷地の一部を「ストーンバーンズ農業センター」という農場にして実験を行っている。将来の資源の高騰や環境問題を見据えて、石油を使わない、持続可能な農業を広めるためだという。

ロックフェラーといえば、過去においては食糧危機を克服するとして「緑の革命」を推進し、そこでは石油製品である化学肥料や農薬が大量に使われた。そして最初のうちは収穫量が急増したが、その後農作地は疲弊し、そのためさらに化学肥料を大量に投入するという悪循環に陥り、最終的には自然破壊や健康被害も引き起こされて、あとには破壊された伝統的な農業が残ってしまった。

また最近では、ロックフェラーは北極圏ノルウェー領土のスヴァールバル諸島の不毛の山に作っている「種子(たね)銀行」へも資金援助している。これは核戦争や地球温暖化などで種子が絶滅しても再生できるように、種子を保存するというのが目的だという。

世の中を支配している者たちが本当に何をしたいのか、私にはわからない。わかることは環境が蝕まれていること、いつ食糧危機になっても不思議ではないということだ。そのために私にできることの一つは、自分で消費するために自分の庭で有機栽培に励むこと、そして一人でも多くの賛同者を増やすことだと思っている。