No.951 エネルギー減らそう

東北地方で起きたマグニチュード9.0の大地震、大津波、そして福島の原子力発電の爆発事故とそれによって全国に影響を及ぼす放射能漏れなど、わずか半月の間に日本は大きな危機に直面することとなった。

エネルギー減らそう

これまでもスリーマイル島やチェルノブイリなど原発による大事故は起きているが、原発が大地震、そして津波に見舞われるという世界でも初めての事態が日本で起きてしまったのである。私は日本に、またはどの国であっても、原子力発電は不要だと思っている。なぜなら核のエネルギーを使うことは、拳銃に1発だけ弾を入れて引き金を引く、生死を賭けたゲーム「ロシアンルーレット」をするために悪魔と取引をするようなものだからだ。

現在日本で原子力発電が供給している電力は全体の2割強にすぎない。それにもかかわらず原発がなければ電力不足が起きるという主張そのものにも疑問を呈したいが、石油の減耗も考慮し、使用電力を大幅に減らすシンプルな代替策がある。

人間の活動に必要なエネルギーは活動速度の二乗で変化する。つまり速度を2倍にするとそれに必要なエネルギーは4倍になり、3倍の速度にすると9倍のエネルギーが必要となる。したがってあらゆる活動の速度を半分にすれば、必要なエネルギーは4分の1になるのである。

国内総生産(GDP)は、1年間に製造され、消費された製品やサービスをお金に換算したもので、言い換えると国家の経済活動のスピードをはかるものだと言える。したがってGDPが500兆円から250兆円に半減すれば、必要なエネルギーは今使われている量の4分の1に減らすことができるだろう。そして必要なエネルギーが4分の1になれば、太陽光や風力、水力発電といった、よりクリーンで安く、また再生可能なエネルギーでまかなうことが可能になる。

1990年から2008年の間に日本では人口もGDPも大幅に増えてはいないのに、消費電力量だけは25%も増加した。しかしこれは日本は電力の消費を大幅に削減することができるということでもあり、国民の健康や幸福を犠牲にすることなく、電力以外のエネルギーも減らすことができるのだ。

現在の経済活動で生産されているものの中で、日本人の健康や幸福になくてはならないものは半分か、半分以下しかないと私は思っている。残りの半分は、利益や給料を求める生産者の強欲さを満たすためのものであり、その証拠に、人々が本当の意味で健康的に幸せに暮らしていくのに必要ではないものを無理やり買わせるために、GDPの1.2%に当たる5.9兆円ものお金が広告費に使われているのだ。テレビやさまざまな広告手段を使い、あたかもそれが必要であるかのように洗脳し、人々の欲望をあおるのが広告の目的なのである。

私たちがこれを理解し、欲望を抑えようとしなければ、これからも原子力発電は必要になるだろう。『我欲を洗い落とす必要がある』と言った東京都 知事の言葉は、言い換えれば、もしわれわれが欲望を抑制することを受け入れないのであれば、悪魔と取引をして、これからもロシアンルーレットを続けていく、ということでもある。