No.953 日本で何が起きているか

地震と津波による原子力発電所の事故発生から1カ月以上がたった。福島第1原子力発電所ではいまでも炉心は発熱し続け、それにあわせて放射能物質の飛散は続き、さらに原子炉から高濃度で大量の放射能汚染水が海へ放出されている。

日本で何が起きているか

海外の政府やメディアは、福島第1原発の状況について当初から厳しい見方を公表していた。ヨーロッパの気象庁は放射能が拡散する予測を公表したが、日本の気象庁はそれをせず汚染状況が悪化しても「健康に影響が出る可能性は低い」と言い続けた。年間1ミリシーベルトとしている被ばく限度量については「健康に影響が及ばない範囲で」被ばく限度の基準を緩める必要があるとして限度量を上げるという。今までの基準はなんだったというのか。

これまでに飛散された放射能を考えれば、日本で暮らし続ける我々は程度の差はあっても空気、水、食品と様々な形で原発からの放射性物質による影響を受けることは間違いないということは多くの人が感じていることだ。不安だからこそ買いだめをしたり、放射能に汚染された可能性のある野菜は食べたくないと思うのだろう。政府は風評被害というが、報道を規制し事実を伝えなければ余計に国民の不安はつのる。予想される最悪な状況を説明したうえで現状がどの段階なのか、それが命にかかわることであればあるほど真実を伝えてほしいと思うが、事実を隠すということは原子炉は政府が思っていたよりも危険な状態にある可能性は高い。

福島原発事故についての日本政府の発表は、昨年、大量の原油が流出したにもかかわらず大丈夫だといい続けたメキシコ湾でのBPの原油流出事故を思い出す。日本の惨状をみてドイツのように核から再生可能エネルギーへの転換を決めた国がある一方で、オバマ大統領は引き続き原発を推進する考えを発表している。オバマのトップアドバイザーには福島発電所の原子炉を製造したGE社の元社長もいて、世界の350からの原子力発電所のうちの104はアメリカにある。強大な原発産業の後押しで原発が安くも安全でもクリーンでもないことが福島の事故で明らかになっても、アメリカは原子力エネルギーを推進していく。

日本政府のこれまでのエネルギー政策や事故が起きた際の対処のしかたもアメリカを手本としているようだが、人の命だけでなく、放射能によって土壌を汚染して農業をできなくし、世界につながる海を汚染して漁業をできなくしては、いくらアメリカの強い命令があっても今後日本が原子力エネルギーを推進することはできない。

放射能汚染水の海への放出について、韓国からは反発の声が上がっているという。先月すでに大気中からヨウ素などが微量検出されたとし、今後放射性物質の混じった雨で汚染される可能性も大きい。空気と海はすべての人類とこの地球で生きる物の共有財産である。日本政府は国民に対してだけでなく、世界に日本で何が起きているのか現状を知らせる義務がある。