No.956 ただちに原発閉鎖を

福島原発事故のあと、私の好きな京都の和食屋の主人からメールをいただいた。店に食事にきた若い男女の話である。

ただちに原発閉鎖を

食事の予約時間に遅れてきたため、店主の最初の印象はあまりよくなく、東京から避難してきたお金持ちの夫婦くらいに思って話を聞いていた。すると 明日から福島の原子力発電所のインフラ工事に行くといい、もう会えなくなるかもしれないので、最後に奥さんと京都に1泊しにきたのだと男性は言った。そして予約の時間に遅れてしまったのは、先に福島へ行っている仲間にカップ麺を送ろうと京都中を探し回っていたからだと(京都でも買いだめをしている人がいるらしいのだ)。

帰りがけ、店主が玄関に設置しておいた「被災地への募金箱」に、奥さんはそっと1万円を入れて帰られた。そのあとすぐ、店主は日持ちのするオカズと方除けのお札を、2人の宿泊するホテルのフロントに届けたと言い、「原発の現場で命がけで、戦っておられる方々が無事にお帰りになることを毎日祈るしかできません」とメールは結ばれていた。

読み終わって、とてもせつなかった。被災地から離れていることもあり、東京のような節電をしていない京都ではコンビニエンスストアなど、相変わらず明るすぎる電気がついていて、原発事故があったことも忘れてしまうほどだ。しかし原発からは今でも人の命を脅かす放射能が出続け、多くの人が危険にさらされ続けている。特にこの男性のような「カミカゼ特攻隊」として他の人を救うためにその仕事を請け負うことによってすぐに死ぬか、または、その仕事をしたことによって命が短くなってしまう人が数多く出たし、これからも出るのだ。この男性とその奥さん、また作業にあたっている自衛隊、消防士、下請け会社の人たちとその家族のことを考えると胸が痛む。

絶対に安全だと言いながら、首都圏が使う電気にもかかわらず首都圏では作らずに遠く離れたところに原子力発電所は建てられた。そして、一度事故が起きれば、命をかけてその後始末をしなければならないのは東電の幹部でも原子力安全保安院でもなく、生活のために働いている日本国民なのである。

今回の原発問題で本当に責任をとるべきは、人命を核のルーレットに賭けることを決めた中曽根康弘やその他の無責任な政治家であると私は思っている。しかし、もはやこの国に原子力発電所がやまほどできてしまっているからには、国民がすべきことは、これ以上の大惨事を起こさないためにも、全ての原子力発電所を閉鎖するよう政府に求めることだ。

原発の事故処理のために、今でも多くの技術者や作業員の方々が健康被害を及ぼすであろう量の放射線にさらされ、被ばく線量が累積する中で瓦礫の撤去、高濃度汚染水の移送、ロボットの操作などに当たっている。命を犠牲にしなければ作れないような電力は不要だと国民は言わなければいけない。原発がなければ停電だという脅しに屈することなく、不便な生活を選択するという意思表示をするべきである。今大人が声をあげなければ、日本の子供たちの未来はない。