No.957 “正しい”情報を読む

5月1日、オバマ大統領はオサマ・ビンラディンをパキスタン、イスラマバードの近郊で殺害したと発表した。そして翌2日、遺体を「水葬」したという。海から何千キロも離れたところから遺体をどうやって移動したのか、その遺体は本当にビンラディン本人だったのだろうかなど、殺害に関して様々な疑問が頭をもたげる。

“正しい”情報を読む

疑問といえば、オバマが大統領に就任した時から一部の保守派は彼がアメリカ生まれではないと主張しており(アメリカ生まれでなければ大統領にはなれない)、4月末、政府はようやくオバマの出生証明書を公開したが、その真偽を疑う議論がインターネット上でなされているところでもあった。

これまで国民は政府の公式発表を疑ったり議論する余地はほとんどなかった。しかしインターネットやさまざまなコンピューター技術の進歩により、かつては一部の支配者層しか知り得なかった情報を手にし、発表された内容を即座に検証してそれを多くの人に伝え、反応することが可能になった。これはすばらしいことでもあるが、同時にどうでもいい情報が流されることで、本当に国民が考えるべきことから目をそらされるという危険もある。オバマの出生証明書などその最たるものだと私は思う。

アメリカ政府を動かしているのは大企業で、その援助なしに大統領になることは不可能である。オバマに政治献金を出したのがウォール街や大手エネルギー企業だったことを考えれば、現政権が誰の利益を代弁しているかは明白であり、国民に真実を知らせることなど重要ではないのだろう。

個人と同じように、一企業が政治献金を行うことは法律で認められている。個人と比べて桁違いのお金を政治家に贈ることができる企業は、その影響力も桁違いに大きい。そして個人の献金理由は様々でも、目的が経済活動である企業が寄付を行う理由は、企業の利益のためにほかならない。

アメリカ政府が発表したビンラディン殺害について言えば、真偽はともかく「テロリストが報復をするだろう」ということを国民に伝えることかもしれない。そうすれば反戦抗議デモ参加者を厳しく取り締まったりインターネットや通信の傍受を強められるし、報復から新たな戦争が始まれば、軍需産業はさらに潤うだろう。

政府の発表を信じられないのは日本も変わらない。福島の原発事故はあいかわらず「ただちに健康に影響はない」程度の事故であり、経済が停滞するからという理由で今でも原発維持・推進をうたう政治家がほとんどだ。これは原子力産業界の影響力が強いためであろう。

しかし国民にできることはある。原発が日本の電力の30%をまかなっているから止められないと言うなら、われわれが30%節約すればよいのだ。都会を便利で快適にするために地方に造られた原発が事故に遭い、地方の人々が家族や家や仕事を失った。節電は当然であり、また脱原発を可能にするのはこれしかない。