No.959 今こそ過去に学ぼう

数年間にわたり、石油に依存した便利な文明社会は束の間のバブルだと認めて、シンプルな暮らしに方向転換するべきだということを私は言い続けてきた。

今こそ過去に学ぼう

一昨年、『「年収6割でも週休4日」という生き方』という本を出したのも、安くて豊富な石油の時代が終わる、そうなれば日本経済は今の半分になり収入も減るが、それでも生き方を変えることによって幸せな人生を送ることができるのではないかという私の信念を伝えたかったからである。私は決して悲観主義者ではないし、経済が縮小することを待ち望んでいるのでもない。しかし現状を分析すれば、どう考えても日本経済は成長どころか持続も難しいと思ったし、今もそう思っている。

ここにきて私たちはその変化を受け入れなければならない状況に直面している。地震も津波も日本列島で生きる限り受け入れていかなければならない自然災害であり、私たちの祖先が何度も経験してきたことだ。しかし原子力発電は、それを選択したことで今苦しみを味わっている。

「CO2を出さない安全でクリーンな電力」は、機械が故障すれば破局的な事故となり、放射能を空中や海にまき散らした。それが誰の責任かを明確にすることもなく労働者や住民に被ばくを強いて、福島県の1次産業と地域コミュニティーは壊滅の危機にひんしている。

企業は夏のピーク時の節電対策として休日や夜間操業への切り替え、休暇の拡大や分散、中には週休3日導入を検討するところも出ているという。電気はためることができない。そのため消費のピークに合わせて発電計画を行い、その結果、原発を増やした。ピークではなく、行動を電力に合わせれば原発など必要なかった。

6年前から私は石油系肥料や農薬を使わない手作業で行う家庭菜園を始めた。便利な文明社会にいながら、工業化社会の次の時代を見据えた暮らしをすることは、無理やりに便利さを奪われるより、余裕をもって変化の道をたどることができる。失敗をしながら、買う必要がないほど野菜ができるようになり、庭に置いた巣箱に今年はミツバチがやってきた。自家製の蜂蜜を味わえる日が遠くないかもしれないと思うとわくわくする。

スーパーマーケットにいけば食材が揃い、夏の暑さもエアコンで快適という便利な生活はわずかここ数十年のことだ。私が子供の頃のアメリカでもほとんどが手作りで、母は小さな店を数軒歩いて地産地消の食材を買った。今の便利な暮らしは、グローバリゼーションの普及とほぼ一緒にやってきた。この短期的な現象は永遠には続かない。

現在は過去よりも優れてはいない。むしろ、私たちはもっと過去に学ばなければいけない。四半期ごとの利益ではなく長期的な企業経営を重視し、子供たちや未来を考えて社会を築き、そして人々が良心的で賢明であった時代を。厳しい時代は始まっているが、次の社会に向かうために建設的な行動をする時間は十分にあると私は信じたい。