No.960 日本の農業、社会を壊すTPP参加

日本の主流メディアがどこまで報道しているかわからないが、日本農業新聞にウィキリークスが暴露したアメリカの公電が紹介された。ニュージーランドのTPP(環太平洋経済連携協定)首席交渉官がアメリカ国務省の担当者に、TPPは日本や韓国などを押しつぶすことが長期的な目標だと語ったというものだ。

日本の農業、社会を壊すTPP参加

ニュージーランドとアメリカは、ともにTPP交渉を主導する立場から農地への投資制度や食品の安全性などの基準を統一する「絶対基準」を定めて経済の自由化を推進しようとしている。それは既存の基準や規制の緩和・撤廃につながり、日本の農地までも自由化させるような仕組みなのである。

ウィキリークスが暴露するまでもなく、オバマ大統領は2月に行った経済報告でも、TPPによって貿易障壁を取り除き、アジアの市場を開放することでアメリカの輸出拡大を目指すと明確に述べた。それはアメリカ企業が日本に参入しやすくすることであり、アメリカの思惑通りの基準を日本が受け入れれば、農業だけでなく医療市場の開放、そして国民皆保険制度の崩壊へとつながる可能性もある。

そのTPPへの参加判断を先送りしていた菅首相は、5月末に行われた日米首脳会談で早期に判断することを口約束してきたという。判断、というのは、もちろん参加するということなのであろう。いったいどこまでアメリカの言いなりになれば気がすむというのか。

東日本大震災で日本の第一次産業は大きな被害を受けた。東北地方に米や野菜、魚などの食料を依存してきた首都圏は、これからは電力不足だけでなく、食料不足にも見舞われることは間違いない。日本国内で流通する食品の約2割くらいが食品廃棄物として捨てられているという記事を読んだことがあるが、これからはそのような無駄ができなくなり、また飽食から、日本の国は一転して少食の国にならざるを得ないのは決して悪いことではないかもしれない。だがそうなった時、真っ先に影響を受けるのは常に弱者や貧しい人々であることを考えると、政府は早急に対策を講じるべきである。

TPPへの参加は、日本の農家をアメリカ政府から多額の補助金を受けているアメリカの大型農業と競争させることである。それによって利益を得るのは一部の多国籍企業や富裕層だけであり、被災を受けずに生き残っている日本の農家すらもそれによって壊滅し、日本の国家安全保障の弱体化につながることは目に見えている。

TPPとは海外の企業や外国人投資家が日本で自由に振舞えるようにすることであり、日本国民の健康や幸福を守るためにある規制をひとつずつ取り除いていくという協定である。原発事故の収拾がつかない混乱の中で、日本政府は国民に幅広く告知することなく、日本でも遺伝子組み換え大豆の栽培を容認する方向へ動きだした。それはあたかもTPP参加のための準備のようでもある。