増税に反対して民主党の議員が離党しようとも、消費税増税を強行しようとしている野田首相であるが、それを皮肉るような記事がウォールストリートジャーナル(WSJ)紙に掲載された。
消費税増税より政府紙幣を
WSJは、野田首相はギリシャのような財政危機を回避するために消費税を5%から10%へと2倍に引き上げる必要があるという議論に政治生命をかけているというが、国会議員ばかりか、世論調査では過半数が反対という結果が示されている。さらに社会保障政策費の支出が増加傾向にある日本では、たとえ消費税を倍にしても2020年には赤字になるだろうと指摘する。
日本経済はその70%が国内消費で成り立っている。1989年に3%の消費税を導入したことにより、それ以前の10年間には毎年10%の成長率を誇っていた日本経済は、1989年から1996年の経済成長率は4%に減退した。さらに1997年に消費税を5%にしてから日本経済はマイナス成長となり、以降ずっと景気停滞が続いている。
このような状況にある日本は、消費税増税よりも約束している社会保障給付額を減らすことか、または法人税の減税だとWSJは提言している。しかし不景気の原因は消費税であって法人税ではないし、社会保障を減らせば、所得のほとんどを消費に充てる人々に影響を及ぼし、ますます消費が減退し、経済が停滞することは目に見えている。
政府が財政赤字を抱え、公的債務を積み上げたのは、「部分準備銀行制度」によって日本国内で流通しているお金の約9割を民間銀行が「貸付」によって作り出しているからである。これは信用創造とよばれ、銀行はこの制度によって預金者から預かっているお金の100倍以上を貸し出すことができる。つまり持っていないお金を作って貸し出し、利子を取ることができるということなのだ。
日本政府はこの民間銀行が作ったお金を借り入れ、税収の不足分を補ってきた。1970年には3兆円に満たなかった日本の公的債務は、1971年から2010年の間に642兆円に膨れ上がり、これは同じ期間に民間銀行が作った金額とほぼ等しい。つまり政府が借金を抱えることになったのも、国のお金を作るという特権を民間銀行に任せているからなのである。
消費税を増税しても法人税を減税しても、部分準備銀行制度を廃止しなければ国の財政を立て直すことはできない。銀行には部分的ではなくすべての貸し出しに100%の準備金を持つことを義務付け、これまで借金でまかなっていた歳出と歳入の差額を政府が作り、それで支払いをおこなえばよい。そうすれば、銀行の貸し出しとともに作られるお金の利子分のために求められる『経済成長』もいらなくなる。
もちろんここで問われるのは、インフレやデフレにならないような適切な貨幣創造を誰が行うのか、ということだが、それは利益を追い求める銀行と政府のどちらが信頼できるか、ということでもある。国の借金をこれ以上増やさず、消費税増税で国民を苦しめずに財政再建をはかるには政府紙幣の発行しかないと私は思う。