No.998 生き方変える覚悟で夏を

大統領選挙のシーズンに入ったアメリカでは、オバマの支持率に関する世論調査結果が毎日のようにニュースをにぎわせている。本来メディアが報じるべきこと、そして国民が知りたいことは、候補者や政党の政策だと思うが、アメリカではもはや選挙は企業からどれくらい選挙資金を集められたかで決まり、オバマや共和党候補のロムニー氏の政策を報道するのはもはや無意味なことなのかもしれない。

生き方変える覚悟で夏を

まして政権を取れば公約など関係ない。消費税を増税しないというマニフェストを簡単に破棄する日本の総理大臣と同じである。オバマは2008年の大統領選の時から気候変動対策を医療保険改革とともに重要な政策課題として挙げていたが、国民の危機感や関心が低いことや、人間の行動が地球温暖化の原因になっているという説に懐疑的な人々によって徐々にトーンダウンしていった。

しかし今、再びオバマが温暖化防止の政策を表明し始めている。理由の一つには、ここにきて気候変動を認識し、温室ガスの排出削減を積極的に推進するべきだと考えるアメリカ国民が急増したためだ。どこの国よりもエネルギーを浪費するアメリカでこれは目新しい動きである。

気候変動懐疑派は、自然界で起きることの原因は分かっていないのに温室ガスや二酸化炭素排出を削減して経済を停滞させることは良くない、というのが主な反対理由だ。しかし近年の自然災害を見れば、確かな証拠があろうとなかろうと、とくに先進国の人間は生き方を改める時にきていると思うのはむしろ当然であろう。

昨年夏、アメリカを襲ったハリケーンはいくつもの河川を氾濫させ、アメリカ東部に数十億ドルもの被害をもたらした。オレゴンでの大雨、ニューメキシコでの森林火災、テキサスで9週間も続く干ばつなど、過去の大災害の記録をいくつも更新し、アメリカ人の多くが実際に気候変動の影響を受けている。

自然災害はアジアにおいてさらに深刻で、昨年7月から3ヶ月以上続いたタイの大洪水だけでなく、中国、韓国も洪水や豪雨の被害を受け、一方モンゴルではひどい干ばつが起きた。太平洋のマーシャル諸島では海水温度の上昇でサンゴ礁は絶滅の危機にある。竜巻や突風、豪雨など日本を襲う自然災害も後を絶たない。

長い間、人々はたばこと疾患を結び付けることはなかったが、多くの人の命が犠牲になった後でようやくたばこの危険性が言われるようになった。近代の石油文明も、もはや保険業界や一部の科学者だけでなく、一般国民が無視できないほどの傷痕を残した後、ようやくそれを見直す時期にきたのかもしれない。

先日は、首都圏をはじめ太平洋側で金環日食を観測した人も多いと思うが、太陽と月と地球が絶妙な距離で並ばなければ金環状態にはならない、まさに自然のなせる素晴らしい天体ショーであった。人間が生存することができるのも地球が太陽や月と適切な距離を保っているからであり、またこの地球以外に人類が暮らしていける場所はない。この地球を破壊せず子供や孫たちに残すこと、それがわれわれ大人の務めなのだ。