今年7月に再生可能エネルギーの全量買い取り制度がスタートする。これは太陽光や風力などの再生可能エネルギーで発電された電気を、国が定める価格で電力会社が買い取ることを義務づける制度だ。これによって自然エネルギー利用の推進が期待される一方で、運用上の問題を解決したり、なによりも、持続可能な社会のために電気の使用について国民はより意識的になる必要があることは言うまでもない。
世界的にも低炭素社会へ向けた取組みが進んでいるなか、アメリカではエネルギーの切り札としてシェールガスが注目を集めているという。シェールガスとは泥岩の一種であるシェール層に含まれる天然ガスで、非在来型天然ガスとも呼ばれる。採掘には大量の水を強い圧力でガス田に注入する。
これまでアメリカでもっとも多くシェールガスを産出しているのはテキサス州バーネットで、アメリカのシェールガス生産の約70%を占める。天然ガスは、ロシア、次いでイランが世界最大の埋蔵量を誇るが、アメリカのシェールガス開発が進めばロシアのガスエネルギー支配力に陰りがでることになるともいわれている。しかしこれに対してロシア側は興味深い反論をしている。
アメリカでシェールガスの生産が増えたのは事実だが、例えば2006年にテキサスで掘削したガス田の数は、現在ロシアでシェールガスを産出しているガス田の数とほぼ同じだというのである。その理由は、ロシアと比べてアメリカのガス田の埋蔵量が極めて小さいため、数多くのガス田を掘りまくらなければならないのだ。
現在、ロシアの天然ガスは市場であるヨーロッパ経済が後退しているために生産は停滞しているが、逆にアメリカの生産量は増加しており、そのため価格が下がっている。しかしいくらアメリカがシェールガスを生産しても、その価格はロシアと比べるとずっと高く、ヨーロッパはアメリカの市場にはなり得ない。それではなぜアメリカはシェールガスを掘り続けるのか。
それについて興味深い記事があった。先月アメリカで2番目に大きいガス会社の創業者が会長を辞職したが、創業者はガス田に対する個人持分を担保に11億ドルもの借り入れをしており、さらにロイターによれば、創業者は自社の天然ガスにヘッジファンドを通じて2億ドルを投じていたため詐欺や価格操作などの違法行為の疑いが持たれているという。この会社はテキサスのシェールガス鉱区を積極的に買収して生産を増やしてきた。これは投資家をひきつけるために自分でシェールガスバブルを起こしたと見ることができないだろうか。
情報操作や誇大広告によって市場を操作し、バブルを起こすことは難しくない。ここで思い出されるのはつい最近株式を公開したFacebookだ。高額な時価総額に期待して『株式公開』というイベントに参加した投機家たちは、公開直後に暴落する株価にドットコムバブル崩壊と同じものを見たはずだ。
こうして繰り返しバブルが起きてはそれが崩壊しているのがアメリカだ。ITであれエネルギーであれ、アメリかにとってはすべてが目先の金儲けが優先する。シェールガスが真の代替エネルギーになりうるか、慎重に検討されなければいけない。