No. 1002 再稼働に代わる提案

大飯原発再稼働をめぐり世論が二分するなかで、野田首相やマスメディアは原発が再稼働しなければ電力が不足するとして、危険な原発を再稼働する必要があると主張している。現在は大飯原発についての議論だが、おそらくは、残りの停止中の原発もいずれは再稼働させるつもりではないかと思う。

原発を再稼働させなければ電力が足りなくなるというその主張を裏付ける証拠を私は知らないし、むしろ足りているというデータを見つけるほうが簡単だ。電力消費量を調べてみると、今の日本の消費量は1989年と比べて30%も増えている。(1)しかし人口は横ばいであり経済も失われた20年といわれるように停滞を続けている。

つまり1989年から、日本人は過剰に電力を使ってきたということだ。一人あたりの使用量をみると、もっともエネルギーを浪費しているアメリカと比べると30%少ないが、他の国と比べて日本はどこよりも多く電力を使っている。アジア諸国と比べると5倍、ヨーロッパより70%、ドイツと比べると16%多い。(1)ドイツは脱原発を発表している。政府が日本には原発が必要だというとき、それはこれからも他のどの国よりも多くの電力を使い続けることの表明なのだ。

電力会社が再稼働したい理由、それは原発をやめると経営が破綻するからであろう。電力会社の資産の89%は原子力発電所設備と核燃料であり、再稼働しなければこれらの資産の価値はなくなってしまう。(2)この問題を解決するために私が提案するのは、政府が原発と核燃料を買い取る方法だ。それは全部で約5兆円ほどであり、消費税税収の半分以下である。国民の福祉のために消費税を増税すると政府がいうなら、危険な原子力発電所を取り除くほどの福祉はないだろう。

その財源としては、電気料金に100%の税金をかけることを提案する。これによって電気の無駄遣いがなくなり、原発と核燃料を買い取る資金を調達できる。日本の電力消費は年間約16兆円なので100%課税すれば16兆円の税収となる。生活に必要な衣食住の消費税を10%にするのと、過剰に消費する電気料金を大幅に値上げするのと、どちらがましだろう。

また私なら製造業は値上げしない。なぜなら製造業はすでに節電対策をとっているといわれているし、そのために製造拠点を海外に移転する理由を作らせることは日本の雇用に悪影響を及ぼすからだ。100%の税金は一般家庭と、小売、娯楽といった産業に課税する。そうすれば皆、電気を効率的に使って節電に励むであろう。

製造業を除外すれば税収は約半分の8兆円となり、これを財源に政府は電力会社から原発と核燃料を買い上げ、翌年からは毎年その税収で原発を廃炉し、使用済み核燃料をできるだけ安全に保管する方法を模索していく。そして安全で、クリーンで、持続可能な方法で国民に電力を提供していくのだ。

野田首相は国民生活のために原発を再稼働するという。しかし国民の生活よりも、福島の原発事故の教訓から、まずは国民の生命を守ること、それこそが首相の務めなのである。

参考データ:

(1)発電量データ

(2)電力会社データ