No.1006 40歳定年制

国民の福祉や国家の安定を一つずつ壊す政策を提案し続ける野田政権だが、こん
どは「国家戦略会議」が「40歳定年制」を言い出したという。

小泉政権時代に進められた労働者派遣の規制緩和によって、資本家や株主、経営
者にとって安い賃金で雇え、不要になれば解雇できる派遣労働者の増加により日
本社会には大きな貧富の格差がもたらされた。資本主義において最も重要視され
るのは利益であり、労働者や消費者を犠牲にして経営者や株主が受益者となる。
40歳定年制の導入を政府が決定すれば、その受益者が労働者でないことだけは確
かである。

つまり、40歳定年制などというのは、賃金や給与を下げることで企業の利益を増
やすための単なる策略にすぎない。日本において転職はすでに珍しいことではな
く、40歳定年を導入したからといって転職がさらに容易になることなど決してな
い。しかし40歳定年になれば、企業は年齢と給与の高い社員を簡単に首にし、若
くて給与の安い人を雇うか、または非正規社員に置き換えることができるように
なるからだ。

40歳定年制は消費税増税同様、間違いなく日本経済も破壊する。日本の経済の
70%は消費から成り、残りの28%は先行投資で、先行投資の多くは消費者の需要
を満たすための工場や設備、在庫への投資である。つまり経済の98%は消費がけ
ん引している。消費のほとんどは勤労者とその家族によるもので、勤労者の収入
とは賃金や給与であり、40歳定年で職の安定確保も給与も減少すれば、消費はさ
らに冷え込むであろう。

このような近視眼的で愚かな政策は、過去20年間に行われた規制緩和、民営化、
そしてACTAやTPPといった自由貿易協定同様、国家と労働者である国民を
巨大企業が支配できるようにするためのものである。そしてこれらの政策はどれ
もアメリカの圧力によって推し進められてきた。

7月には多くの市民が反対する中、米軍の輸送機「オスプレイ」が岩国基地に陸
揚げされた。日本が主権国家なら、事故の多発する危険な輸送機を日本の国土で
使用することを禁じてしかるべきだが、野田総理は「アメリカ政府の方針だか
ら」と言ったという。これはつまり、日本はアメリカの属国だから、ということだ。

40歳定年制が、すでに崩れかけている日本の終身雇用制の息の根を止めるための
アメリカからの圧力でないとしたら、このような提案をする国家戦略会議やこの
推進者は、企業から政治献金をもらっている政治家か、企業から天下り先を提供
してもらっている官僚、企業から広告宣伝費をもらっているマスメディア、企業
からコンサルティング料をもらっているいわゆる御用学者など、企業から手厚い
接待を受けている人々であることは間違いない。

日本の「リーダー層」がここまで愚かで簡単にお金で買収され、このようなばか
げた強欲な提案をして日本の勤労者や経済、国家を裏切るようなことをすること
が私には信じられない。