尖閣諸島の領有権をめぐる中国との問題や憲法9条の改悪に向けた動きに関連して、アメリカのワシントン・ポスト紙は日本が右傾化しているとする記事を掲載した。
アメリカの新聞に書かれるまでもなく、中国で反日運動が拡大するなかで尖閣諸島を購入するといった発言をする政治家が出るなど領土問題はナショナリズムを高揚させ、日本でも武力衝突という事態を懸念する声もある。戦争が最大の産業であるアメリカは日中間の緊張が高まればそこから利を得られるため、日本の右傾化を歓迎していることは間違いない。
実際、世界の2011年の武器取引総額は853億ドルで、そのうちアメリカの武器輸出額は663億ドルと4分の3以上を占めている。2位はロシアで、金額は大きく離れて48億ドルだったという(ニューヨークタイムズ紙)。世界経済が減退する中で、特に武器取引額が増えたのはイランとの問題が起きている湾岸諸国で、サウジアラビアやUAE、オマーンなどが多額の発注をしたことによる。紛争があれば武器が売れる。アメリカがイランを仮想敵国とするだけで、アメリカの軍事産業は多大な利益を得るのである。
しかし、尖閣諸島をめぐる領土問題で日本が中国と武力衝突をすることはないだろう。なぜなら尖閣諸島、そして竹島の問題も、野田政権が消費税を5%から10%に増税することから国民の目をそらさせるために起こしている問題だからである。消費税問題について国民に考えたり議論をさせたりしないようにするために意図的に起こしていることだと、私は確信している。
尖閣諸島の所有者が日本か中国かということと、日本人が衣食住にいくら消費税を払うかを比べたら、どちらが日本人の生活に大きな影響を与えるのか考えてみるといい。日本がいま中国と戦争をし、中国に武力で勝って尖閣諸島をとれると政府が考えるはずがないからだ。
さらに、日本の主要な貿易相手国はどこかといえば、輸入も輸出も日本の最大の貿易相手は中国である。日本の輸出業者にとって2008年まではアメリカがずっと1位の座にあったが、金融危機以降の09年から、中国が日本の最大輸出相手国となった。輸入についても02年にアメリカに代わって中国がトップとなり、以来ずっと1位である。これは日本の企業が労働賃金の安い中国に工場を建てて現地で製造し、日本に製品を輸入するというシステムになったためである。その中国と戦争をするなど、日本政府を牛耳っている経団連が許すはずはない。
繰り返すが、尖閣諸島も竹島問題も、より重要な問題から国民の目をそらさせるために意図的に作られた話であると私は思っている。国民にとってより重要な問題とは、消費税を5%から10%に増税することであり、いまだに使用済み核燃料も取り出すこともできずに高濃度の放射能を放出している福島第1原発である。国民に秘密で参加しようとしているTPP、多くの住民の反対にもかかわらず試験飛行を始めたオスプレイもそうであろう。これが民主党野田政権だということを、選挙の前に国民はしっかり覚えておくべきである。