消費税の大幅増税を打ち出したのは民主党政権であったが、竹下政権で3%の消費税を導入し、橋本政権で5%に増税したのは自民党だった。
他に財源があるにもかかわらず、なぜ官僚や政治家は一貫して消費税増税に固執するのだろう。国家の財政が赤字となれば、根本的な議論として税収の使い方だけでなく、税金そのものも精査する必要がある。消費税について言えば、いくら増税しても、支払われる税金がすべて税収として国庫に入らないという問題がある。
日本の消費税は、小売業者が価格に税金を加えてお金を消費者から取り、それを税務当局に渡すのではなく、流通におけるすべての段階で税が徴収されている。卸売業者は製造業者から買う場合に払い、小売業者は卸売業者から製品を買うときに消費税を払う。そして消費税を徴収した会社はそれを税務当局に払うのではなく、売り上げから供給にかかったお金を差し引き、消費税も含めてそれからその差額に0・05をかけ、その計算の最後の部分だけが国庫に入る。さらに年間売上高が1千万円未満の場合、消費税は免除されている。
そしてこの消費税の利点を最も享受しているのが輸出業者だ。海外に製品を売る時、消費税を取ることができないからであり、したがって輸出者には、その下請け企業などに払ったと考えられる消費税が還付される仕組みになっている。
製造メーカーは1次、2次といった下請け部品メーカーが作ったものを最終的に組み立てて海外に輸出する。この取引で上位にあるメーカーが下請けに消費税分を上乗せして支払えば問題はない。しかし関東学院大学の湖東教授によれば、親会社の力を背景に消費税分を単価切り下げに利用することなどが往々にしてあるという。そしてこの仕組みによって、1兆円超の消費税還付金が大企業上位10社に支払われているというのだ。5%の消費税が倍になれば、この輸出業者への還付金がどれほどになるのか、経団連の輸出大企業が消費税増税を推進する理由は明白である。
輸出企業が下請けに消費税を支払っていると主張しても、資本主義において単価を決めるのは親会社など力の強い企業だ。他の下請けに替えるとか、海外に製造拠点を移転すると言って、その単価を押し付けることは容易である。還付金といっても、消費税の場合納めすぎた税金を還付してもらっているのではなく、多くの下請け企業が納めた税金が輸出業者に支払われているのだ。
自民党政権は消費税を値上げし、社会保障財源にするというかもしれないが、社会保障などという前に、まずこの消費税の在り方を精査するべきだ。日本の大部分の企業は中小企業であり、消費税は輸出戻し税制度という、一部の輸出大企業への補助金にほかならないのだ。
財務省や政治家、メディアが言うように、消費税は誰もが払う最も公平な税金などではない。所得の低い人ほど負担が高い逆進税であり、増税によって日本の景気がさらに冷え込むことは過去の消費税増税からも明らかである。今の消費税の在り方は、あなたが弱肉強食の社会が公平な社会だと思っていない限り、不公平税以外の何ものでもないのだ。