日本政府は2014年4月から消費税を増税するための準備を着々と開始した。
わたしは以前から日本経済が停滞した最も大きな理由は消費税の導入にあると分析してきた。経済がある程度の規模まで拡大すれば成長が衰えるのは当然であり、日本の国内総生産(GDP)の成長率も、特に1989年から減速が始まっている。そして97年からは毎年縮小傾向となった。あらためていうまでもなく、89年4月に3%の消費税が導入され、97年4月に5%に増税されたからである。
政府が発表しているデータをみれば分かるように、日本経済の70%は国内消費で成り立っている。
3%の消費税を導入したことにより、それ以前の10年間は毎年10%の成長率を誇っていた日本経済は、89年から96年には4%に減退し、97年からマイナス成長となり、以降ずっと景気停滞が続いている。これは国内消費を支えている日本人の大部分である中流層や低所得層の税負担が増え、消費が減退したためなのだ。
消費税を導入してから、政府は所得税の最高税率を20%も下げ、法人税も89年の40%から2012年には25・5%まで引き下げた。富裕層、大企業の負担は軽減される一方で、一般国民の税負担を増やし、そしていまさら消費税を倍に上げるのは、政府は現実をまったく直視していないということだ。
さらに、安倍首相は日本経済を2%インフレさせようとしているが、これは言い換えると消費にかかるコストが2%上昇するということだ。さらに安倍晋三首相が自民党総裁になってから円安が進み、1ドル78円から94円とすでに20%も円安になっている。日本は食料の多くや石油などのエネルギーのほとんどを輸入に頼っている。ガソリンや小麦の価格の値上がりが始まるのは当然のことであるし、このまま円安傾向が続けば生活必需品のコストはさらに上昇していく。そこで消費税が2倍になったら、どれだけ国民の生活に影響が出るかエコノミストでなくても分かるはずだ。
さる2月、安倍首相はデフレ脱却に向けて産業界に賃上げを要請したという。それについてロイターが行った企業調査の結果によると、人件費や賃上げに前向きに転じた企業はわずか1割にとどまったという。設備投資についても積極化に転じた企業は24%だった。賃金が上がらず、物価だけが上昇すれば消費は冷え込む。このような状況の中で生産を増やすための設備投資などとてもできないと考えるのは経営者なら当然である。
インフレ目標を掲げてデフレを脱却し、物価が上昇して、しかし賃金は上がらないかもしくは下がるとなれば、いったい日本人の生活はどのようになるのか。
企業は賃下げだけでなくリストラも行うであろうから失業が増え、貧富の格差はさらに拡大するであろう。日本社会はどのようになるのか。失政による社会の混乱から国民の目をそらせるためには、周辺諸国と領土紛争を起こせばよいなどと安倍首相が考えていないことを信じたい。