No. 1043 米国政府のスパイ行為

アメリカ政府の諜報活動を暴露したCIAの元職員エドワード・スノーデン氏の行き先を巡り、アメリカとロシアで続く話し合いは中々結論が出そうもない。

自由と民主主義を標榜するアメリカが実は世界に対してスパイ行為を行っていると告発したスノーデン氏は連れ戻されれば終身刑になるといわれている。この期に及んでも日本政府は、「しっかりと秘密は守られるべきだ」というナイーブなコメントをしているが、スノーデン氏の告発以前にも、アメリカが日本を含む世界の大使館などに盗聴を行っていたことはウィキリークスなどによって暴露されてきた。

さらにスノーデン氏が名指ししたアメリカのPRISMというスパイシステムは、以前から問題視されてきた「エシュロン」の新しいバージョンにすぎない。エシュロンは巨大なアンテナで全世界の電話無線を傍受し、日本の三沢基地にも存在する。外交問題評論家のウィリアム・ブルムが2000年に出版した「Rogue State: AGuide to the World’s Only Superpower」(日本語訳『アメリカの国家犯罪全書』)には、エシュロンを使いドイツの風力発電機メーカーが企業機密を盗まれたこと、フランスのエアバス社が契約をアメリカのライバル企業に持っていかれたことなどが記されている。日本についても1995年に自動車部品に関する日本企業代表の米国との交渉が盗聴されたとある。つまりスノーデン氏は、これまで一部の人が問題にしてきたアメリカのスパイ行為を改めて訴え、冷戦時代の盗聴ネットワークを使い新たな「経済戦争」を仕掛けていることを暴露したのだ。

インターネット検索エンジン大手グーグルは、NSAがそのサーバーにアクセスしてデータを収集しているとされている。数年前、同社のCEOは、一定期間保存しているユーザの情報をアメリカ政府に提出することもありうると明言した時、「プライバシーについて、人に知られたくないのなら、最初から利用すべきではない」と述べた。私はそれでグーグルの使用を止めたが、スノーデン事件以後、グーグルからユーザ・クリックを残さない別のサービスへ切り替える人が増えているという。

前述したブルムの著には、1999年9月にNSAがマイクロソフト社と、ウィンドウズ95-OSR2以降の全てのバージョンに特殊な「キー」を埋め込むことを合意していると書かれている。世界で最も普通に使われているOSにNSAの「裏口」がついているのだ。さらに「フランス国防省の諜報部門である戦略問題研究所によれば、マイクロソフト社の創設は財政的にもかなりNSAにより支援されており、IBM社はNSAの圧力によってMS-DOSの採用を余儀なくされたようである」、とも書かれている。

私たちの電話やインターネットなどの通信は、ずっと見られて、その内容はどこかに集められてきた。スノーデン氏が暴露したアメリカ政府のスパイ行為は、10年以上前から言われてきたことに過ぎない、ということなのだ。