No. 1044 話題のシェールガス

ここ数年、アメリカではシェールガスが新しい天然ガスとして話題になっているが、実際はクリーンでも安価でもなく、シェールガス・ブームは、つくられたバブルに過ぎないと私は主張してきた。

その理由は、オバマ大統領や主流メディアがいくらシェールガス革命でアメリカはエネルギーに関してほぼ自給自足になる、と喧伝(けんでん)しても、報告されている採掘生産量や埋蔵量は独立機関による正式な調査によるものではなく、その存在自体が過大に見積もられているということ、そしてそれ以前に、シェールガスをエネルギーとして利用する代償としてもたらされる環境汚染があまりにも大きいためだ。

シェールガスの掘削に用いられるのは水圧破砕法という技術で、地層に割れ目を入れ、化学物質を含む水を高圧で流し込み、ガスを抽出する。ここで使われる化学物質が地中に堆積し、周辺の地下水に漏れ出して環境汚染の原因となるのである。また、使用した汚水も適切な処理をしなければならず、汚水をためておくタンクに亀裂が生じたりして地上に漏れ出すこともあるという。

つい先ごろ、東京電力福島第1原発でも地下水から高濃度の放射性物質が検出された。原子力規制委員会が言うまでもなく、原子炉建屋などにたまった汚染水が地下に漏れているのは間違いない。福島での深刻な事故から2年半たった今も、原子炉は手付かずのまま日本の大地を、海を汚染し続けている。なぜなら破損した原子炉の炉心を冷やすために、常に水を流しておかなければならず、これからも汚染水は増え続けていくからだ。

過酷な現実がまだ進行中であるにもかかわらず、安倍首相は原発の再稼働と輸出を積極的に進めるのだという。大きな事故が福島で起きたから、しばらくは起きないだろうとでも考えているのか。福島の人々への補償や廃棄物処理、20~30年かかる廃炉の問題など、原子力発電は経済的にみても効率的なエネルギー計画とは程遠い。さらに原子力はもともと原爆を造るために始まった技術である。それを唯一の被爆国の首相が海外に売り込む姿は、経済至上主義という道を暴走する日本の姿そのものだ。

化石燃料は有限で、CO2排出量が多く温暖化の要因となる。シェールガスも水圧破砕の問題だけでなくそれにともなうメタンガスが地球温暖化をもたらす。CO2排出量が少ないといううたい文句で推進された原子力がクリーンエネルギーでないことは福島の事故が証明し、ヨーロッパの国々では脱原発が進んだ。この地球上で、経済ではなく命を尊重して生き続けていくなら、日本も脱原発を目指し、環境を破壊しない再生可能エネルギーへ移行するべきである。しかしアメリカがシェールガスに沸くように、日本は原子力に固執する。先の参院選は自民党の圧勝となり、有権者の半数は投票にも行かなかった。自民党の経済至上主義に賛成、これが現時点で日本の民意なのだ。