7月の参議院選挙はメディアの予想通り、自民党の大勝利だった。これを受けて自民党は、国民が自分たちを支持しているとして消費税の増税、TPPへの参加、原発再稼働、そして憲法改正を実施していくのであろう。
今回の参院選の投票率はどこの選挙区も低かったが、鳥取選挙区では58.88%と、2010年の参院選の65.77%を大きく下回り、02年の参院補選を除いて国政選挙で初めて6割を切ったという。結局、国民の半数は自分の国がどうなろうと関心がないのかもしれない。
自民党の圧勝によって日本には与党の暴走を止める「野党」がいなくなった。政府における与党と野党の関係は、自動車のアクセルとブレーキのようなものだ。ブレーキがなかったり故障していれば自動車が危険であるのと同様に、野党の力が弱かったり、野党不在の政府がいかに危ういか、日本国民は理解していない。この選挙で多くの人が自民党に投票したが、それらの人々は自民党が日本を統治するのに最適だと思ったからであろうが、そのために日本はもはや手のつけられない状態になってしまった。
国民のための政治をしなければ野党に票が流れ、議席を失うかもしれないという危機感がないので、与党は自分たちに政治献金をくれる大企業のためだけの政策をとることができる。自民党はその強さゆえ、国民をないがしろにする政策を堂々ととっていける。アベノミクスは継続し、「経済は国力の源」と強調してさらに成長戦略をとり、大企業の法人税を減税してその分は消費税を増税し、負担は広く国民に負わせるだろう。
選挙が終わり、環太平洋連携協定(TPP)についてようやくメディアも交渉内容が秘密だというその異常さを報じるようになった。しかし遅れて交渉に参加した日本がすでに決まった内容を覆すことは不可能で、日本市場の関税や非関税障壁がなくなれば利益を得るのは外国企業で、日本は農業や医療、そして生活の安全基準などを守ることすらできなくなるだろう。
カナダにある、持続可能な開発のための公共政策国際研究所(IISD)によれば、脱原発を決めたドイツ政府に対して、スウェーデンのエネルギー会社がISD条項に基づいて訴訟を起こすという。損害賠償額は7億ユーロ(900億円)以上となる見込みだ。ISD条項はTPPにも含まれ、海外の投資家が政府の政策によって受けた損害に対して訴訟を起こせるというものである。日本にあてはめると、自民党は原発再稼働を方針としているが、もし脱原発ということになれば、日本で原発ビジネスを行っている外国企業から巨額の損害賠償を起こされうる、ということだ。
また自民党の憲法草案をみれば、自衛隊を国防軍にして自衛のための戦争はやるとあるから、日本がどのような国になっていくか明らかだろう。言論の自由も制限されて、このような政府批判は公の秩序を乱すとして禁じられるかもしれない。ブレーキのない自動車のような自民党を、もう誰も止められない。