アメリカ情報機関のスパイ行為を告発し続けるスノーデン氏が、NSAが各国首脳35人の通話を盗聴していたことを暴露したと英ガーディアン紙が報じた。これに対して多くのアメリカの同盟国が非難し怒りを表している。
愛国者法を制定し、「テロリストがアメリカを攻撃する計画を未然に防ぐため」としてアメリカは世界中で通信傍受を行ってきた。スノーデン氏が暴露した数々の出来事は、それらスパイ行為がテロとは関係のない次元でも行われていることを示しており、海外の要人を盗聴していたのはアメリカが政治的、経済的に有利になる、または先制することが目的であることは明らかである。
首相に就任する以前の2002年から携帯電話を盗聴されていたというドイツのメルケル首相には、オバマ大統領が電話会談で謝罪したというが、独ディア・シュピーゲル紙によれば、NSAは前メキシコ大統領フェリペ・カルデロン氏のメールを大統領在任中にハッキングしていたといい、仏ルモンド紙は、NSAは12年から13年1月の間に7千万件を超えるフランス民間人の通話を盗聴、記録してきたと報じている。また、ブラジルのルセフ大統領は、アメリカの国家安全保障を脅かすことはしていないブラジル石油公社に対してNSAがスパイ活動を行っていたのは、経済的、戦略的目的だと非難した。
スノーデン氏がこれまでに暴露したのは彼が掌握する情報の一部だとされる。だからこそアメリカは執拗(しつよう)に彼を裏切り者として逮捕しようとし、スノーデン氏の協力者であるジャーナリストのグリンワルド氏も、英政府からの圧力を避けるためにガーディアン紙を退社して新たなニュースメディアを立ち上げるという。彼らによってこれからも新たな暴露がなされることで、スパイ行為が停止される日がくるのを私は強く望んでいる。
それにしても今疑問に思うのは、なぜ日本で、このNSAのスパイ行為についての懸念が広がっていないのかということだ。同盟国をスパイしていたのなら、そこに日本の要人も含まれてはいなかったのか。また他国政府のように日本政府はアメリカ政府を問いただしたり、非難しているのだろうか。
もしNSAが日本の政治家や企業にスパイ行為を行っていないのだとしたら、それは盗聴や電子メールを読み盗るまでもなく、アメリカの言いなりになってきた実績があるからかもしれない。敵国や同盟国と違い、属国なら宗主国の命令でいかなる情報も提供せざるを得ないからだ。
さらに、もしアメリカの命令に逆らえば、中国と接近した田中角栄がロッキード事件で逮捕されたように、米国債を売ることをほのめかした橋本元首相がその直後に中国人愛人の記事が出たように、NSAの情報網を使って失脚に追い込まれることを日本の政治家は十分理解しているからかもしれない。または日本政府そのものもアメリカのスパイ行為に加担しており、だから沈黙しているのか。これからもっと情報が暴露されれば、それらのことも明らかになっていくだろう。