4月になり消費税が増税され、「アベノミクス」の批判が海外からだけでなく国内からも聞かれるようになってきた。
2013年第4四半期は、輸出、個人消費、設備投資の減速を反映して日本のGDP成長率はわずか0.3%と、予測されていた0.7%の半分にも満たなかったし、マスメディアは株式市場の活況を大きく報じてきたが、その株価も今では値下がりを続けている。
当初から私は、アベノミクスは日本の経済や社会を壊すと主張してきた。純輸出はGDPのわずか1%にすぎない日本経済は輸出主導型ではない。円安になれば、輸入に依存するエネルギーや食料が値上がりし、そればかりかただでさえ空洞化の起きている製造業の海外流出を奨励することになる。輸入が増えて貿易赤字が過去最大の記録を更新しているのも、日本企業が海外で生産した製品を輸入しているためだ。
1月にスイスで開かれたダボス会議で安倍首相が行ったスピーチが首相官邸ホームページに掲載されている。
安倍首相は「就任前、日本は黄昏の国、という論調があったが、今はさっぱり聞かれず、成長率はマイナスからプラスへと大きく変化した。日本は夜明けを迎え、アベノミクスにより経済が立て直されて、経済はようやくデフレから脱し、春には賃上げがあり、消費が伸びる」と語ったという。
昨年のオリンピック誘致で、福島原発事故の汚染水は0.3平方キロメートル以内にブロックされ、過去も現在も未来も絶対に安全、と太鼓判を押したように、安倍首相には希望的観測と現実の区別がつかないのかもしれない。
安倍首相がダボスで語ったのはそれだけではない。電力市場の完全自由化、医療の民営化、米の減反廃止、民間企業の農業への参入、そしてTPPへの参加宣言、さらには日本を外国企業や外国人労働者が最も仕事をしやすい国にしていくとも言った。4月から消費税を3%増税するのも、法人税を2.4%減税するためだ。しかし法人税を減税しても消費は停滞し続けるため、企業が日本国内に設備投資を増やすことはないであろう。
昨年株価が上がったのは景気が回復したからではない。日銀が国債を買い取り、日銀券、すなわち市中に出回るお金を増やしたからであり、銀行は所有していた国債の代わりにお金を手にしたが、その借り手がないためにお金が株式市場に回っただけなのである。
アベノミクスが目指す2%のインフレを達成すべく、物価は生鮮食料品や電気料金など、生活必需品が上昇し始めている。その一方で賃金は減少し、この傾向は4月以降も続くことは確実であろう。特に影響を受けるのは日本の労働者の37.6%(1956万人)にも上る非正規雇用で働く人々だ。非正規雇用の賃金は平均で正社員の3分の1であり、健康保険や年金などもカバーされていない。
賃金を下げ、弱者に対する福祉を削減するアベノミクスは、政府官僚と大企業の癒着による経済支配である縁故資本主義そのものだ。今、即刻すべきことは、夜明けを迎えるどころか実体経済の悪化を止めるために消費税増税を撤回することだろう。