原発再稼働が進まない中、アメリカ産の安いシェールガスが日本のエネルギーの救世主になるかのように報じられている。日本企業がアメリカ産シェールガスを日本へ輸入することを米政府が認可し、予定では2017年から輸入が始まるという。しかしすでにエネルギーの純輸入国であるアメリカが、シェールガスを輸出することはないだろう。
シェールガスなどの地中の資源を採掘する際に、水圧で岩を破砕する工程は「フラッキング」と呼ばれる。フラッキングは石油や天然ガスの採掘よりも難しく、また採れてもすぐにシェール油田は枯渇して生産性は急激に低下する。全体の生産量を維持するためには、新たに資金を調達して次の場所へ移って再びフラッキングをしなければならず、従って継続した巨額の投資を必要とする。日本が革命だとして期待しているものは08年の不動産バブル崩壊に次ぐシェールバブルなのだ。
現代社会や経済は石油によって支えられている。その石油の総量の半分を消費したことを「ピークオイル」と呼ぶ。その言葉を知り、エネルギー問題について調べ始めたのは2004年だった。なぜそれが重要かというと、埋蔵されている石油がまだ半分残っていても、ピークオイル以降は石油を取り出すために投入されるエネルギー量の方が上回り、全体としてマイナス・エネルギーになり採算が合わなくなるからだ。
2006年、世界はピークオイルを迎えたが、何事もなかったかのようにこれまで同様、大量にエネルギーを消費する社会システムを維持していくために、アメリカのエネルギー業界が作り出したのがシェールガス革命だったのである。しかしエネルギー事情を楽観的に予測する米エネルギー情報局(EIA)でさえ、早ければ20年にはアメリカは天然ガスを輸出する余裕はなくなるとしている。また現時点でもアメリカの天然ガスの在庫は過去5年平均の半分に満たないという。
シェールガスに期待できない証拠は他にもある。シェールガスのプロジェクトに先発組として参加したあるガス会社が、アメリカで開始したシェールガス鉱区に行った330億円の投資のうち290億円を14年3月期の特別損失として計上した。理由は経済性に見合ったガスを取り出せない生産状況で、現時点では生産性の改善が見込めない、というものだ。この企業だけでなく、ロイヤル・ダッチ・シェル、ブリティッシュ・ペトロリアムも同様に昨年評価損を計上している。
4月、政府が発表した新エネルギー政策では、いまだ収束していない福島原子力発電所のことは忘れたかのごとく原発が国の基本的な電力供給源と位置付けられ、使用済み核燃料を再利用する核燃料サイクルを維持する方針も打ち出された。今こそ再生可能エネルギーを増やし、それにあわせて一般国民は省エネの道を選ぶべきではないか。原発やシェールガスに頼っては、安全で安定した日本の未来はない。