消費税が8%になった。甘利経済財政担当大臣は4月早々の記者会見で、消費は大きく落ち込んではおらず、増税の影響は想定内だと述べたという。
消費税増税によって国民に大きな影響が出ていないというのであれば、長い不況の中で給料が増えることを期待できない多くの勤労者は、もともと生活に必要な物しか購入してこなかったと言えるかもしれない。また来年、消費税を10%に引き上げるために、何としてでも国民生活には大した影響など出ていないことをアピールしたい、という思いがあるのだろう。
消費税増税で節約を強いられるであろう国民の苦しみを「想定内」という言葉で片付けながら、法人税については減税すべきだという政府が、誰のために政策を決めているのかは言うまでもない。4月末にヨーロッパを歴訪した安倍総理も、訪問先で日本経済の問題解決や停滞からの脱却を表明し、OECDではアベノミクスの成果を訴える講演を行ったという。
繰り返すが、給料が上がらない中で消費税が3%増税されただけでも大部分の国民にとっては痛手である。また日本の失業率が金融危機以来最低の水準でヨーロッパよりさらに低いといっても、正社員になりたくても昇給も保障もない非正規雇用に甘んじている勤労者が3分の1を占めている。アベノミクスがもたらしている現状は、金持ちの税負担を中流と貧困層に押し付けただけであり、緩やかな不景気だがエネルギー代は上昇し、時間がたてば消費停滞により経営の悪化する企業も増えて国家の税収も減少していくだろう。
この不景気が勢いを早めつつある中、もはや日本や日本人は絶望に屈するしかないのだろうか。確かにそれは簡単だが、これほどもったいないことはない。なぜなら過去においていくつもの高度に進んだ文明社会が衰亡し、われわれにはそれらを参考にして変化に対応し、未来の日本社会がより良いものになるよう努めることもできるからだ。
その方法の一つは、大恐慌のような外的要因で崩壊を余儀なくされる前に、自ら生活をシフトダウンすることである。そして時間と経済的余裕のある間にスキルや道具の使い方を身につける。エネルギーが高騰し、経済が崩壊してもすぐに江戸時代のような生活に戻るわけではないが、例えば家庭菜園一つをとっても、慣れておかなければ作ろうと思ってもすぐにできるわけではないからだ。
TPPに参加すれば食料が安くなると考えるのは浅はかである。例えば、アメリカ最大の農産業を抱えるカリフォルニア州は、昨年観測史上最悪の干ばつを記録し、秋まではわずかな降雨しか見込まれていないなど、今年も乾燥した年になる可能性があるという。日本は言うまでもなく小麦、トウモロコシ、大豆のほとんどを輸入に頼っている。アメリカ国内で不足すれば、どうしてそれらを日本に輸出することがあるだろうかということだ。
もちろん未来がどうなるか、誰にもわからない。安倍総理のように、日本はデフレから脱却しつつあり、また福島の放射能汚染もコントロールされている、という楽観主義のリーダーもよいのかもしれない。しかし私たち一般国民は、それをただ妄信せず、持てるお金やリソースを使ってこれからの生き方を模索し、準備をするのが懸命な戦略であると私は思う。