ウクライナ問題で軍事介入したロシアをアメリカが強く非難し、先のオバマ大統領訪日時には安倍首相もロシアに対してアメリカと協調行動を取ることで合意した。
ウクライナ南部のクリミア半島は、住民投票によりロシアに組み入れられることになったが、ロシア帝国の一部であったクリミアは、1991年のソ連崩壊後も半数がロシア人である。反ロシア的な機運の高まったウクライナ政府を、ロシアの影響力を弱め、同じくこの地域を支配したいアメリカが支援しているのがこのウクライナ問題である。
ウクライナをめぐる欧米とロシアの駆け引きは、エネルギー資源をめぐる問題だと私は思っていたが、それは一つの要因にすぎないと考えさせられる本を読んだ。ワシントン大学の助教授、ジャコモ・プレパラータによる「ヒトラーを操る」(“Conjuring Hitler” 2005年)という本である。
1900年以降のイギリス、そしてその後イギリスとアメリカがとってきた政策は、ヨーロッパとアジアを合わせたユーラシア大陸が一つにまとまらないようにすることであった。最も大きな大陸であるユーラシアが一つにまとまれば、その力は米英をはるかに超えるものとなり、そこに入らない米英の影響力は大きく後退する。ユーラシアの主要国といえばロシアとドイツであり、だからこそ米英の政界はナチスドイツに資金援助を行い2国が戦うように仕向けた。ヒトラーの台頭と政権掌握を支援し、対ソ攻撃に仕向けたのはアングロ・アメリカであったというのである。
第2次大戦では、中国を侵略した日本がもう一つの大国となることもアメリカは絶対に許さなかった。米英の常とう手段は、イギリスがインドに対して行ったような「分割統治」であり、人種や宗教などの違いで分割した集団を互いに反目させることで長期にわたって統治するという戦略だ。イスラエルをつくることで石油の採れる中東地域を分割統治したり、韓国や中国との間に問題が起きるよう日本政府に働き掛け、アジア地域が平和の下で統一されることがないようにしているのもこの方法である。
バイキングが1066年にイギリスを征服し、16世紀後半からイギリスによるアメリカの植民地化が始まった。今起きているのは、アメリカが世界を植民地化するという同じパターンである。ウクライナはその一つの試みにすぎない。
日本では学校で英語を強制的に習わなければいけなくなった。日本にもある、世界を監視する電子スパイネットワーク「エシュロン」に参加しているのは、アメリカ、イギリス、カナダ、オーストラリア、ニュージーランドという米英同盟国だ。あちこちの地域で起きている出来事をつなぎ合わせれば、アングロ・アメリカによる世界統治は陰謀などではなく、まぎれもない事実だということが分かるのである。