No. 1079 労働者攻撃の構造改革

厚生労働省が6月初めに発表した毎月勤労統計調査によると、働き手1人が4月に受け取った現金給与総額は前年同月より0.9%増えたものの、消費税増税による物価上昇分を除くと実質賃金指数は3.1%の減少になったという。

勤労者の実質賃金は過去10カ月連続して減少しており、消費税が8%になったことで家計収入は3月よりもさらに目減りした。経済産業省によれば、1997年以来初めての消費税引き上げの影響で、4月の小売業の売り上げは前月比13.7%減と、過去14年間で最大の減少となった。

勤労者の賃金が上がらない状態で消費税を引き上げればこうなることは明らかだったが、安倍総理は法人税減税を推進する一方で、一般労働者には幅広く税金を負担させるという案を押し通した。小売りの売り上げが落ちて賃金が停滞したまま、円安によりエネルギーや食料などさまざまな輸入品の価格が上昇してインフレがさらに進めば、今後日本の一般勤労者の暮らしはますます厳しいものとなることは目に見えている。

デフレにより物の値段が下がると小売業の売り上げが減る。それにより社員の給料が減ったり、リストラがおきるなど、さらに物が売れなくなるという悪循環を止めるためとして、「デフレからの脱却」を最大の課題として掲げたのがアベノミクスだった。しかし賃金は減少傾向のまま、円安や消費税増税により物の値段だけがじりじりと上がり始めた。結局アベノミクスとは、労働者を攻撃する「構造改革」なのである。

日本の勤労者の37%は非正規社員、つまりパートやアルバイト、契約社員や派遣社員である。正社員は契約期間に定めがなく社会保障などの面でも守られているが、パートやアルバイトは期間限定の雇用契約であり、更新されなければ契約期間終了時点で雇用が終わる。契約社員も直接会社に雇われ年金や健康保険、福利厚生なども正社員と同じく提供されるが、契約が終わればそれまでだ。派遣社員も雇用契約は派遣されている期間だけで、仕事が終わると給与も社会保険もなくなる。

正社員なら安泰かといえば、安倍政権は今、解雇の自由化を含む労働規制の撤廃をもくろんでいる。また一定収入以上のホワイトカラーを労働基準法の労働時間規制の対象から除外し、何時間働いても会社が残業代を支払わなくていいようにするという「ホワイトカラー・エグゼンプション」を導入しようとしている。企業で働くあらゆる労働者の処遇が切り下げられていくのである。

さらにはオリンピックや復興作業で人手が不足するとして、外国人労働者の受け入れを増やすとしている。これにより日本の失業率はさらに高くなり、一方で日本人よりも安い給料で働く外国人と職を競い合うために賃金はますます下がっていくだろう。

言い換えると、これらはどれも小泉政権時代から財界の要望リストであった。安倍総理は一般国民のためではなく、大資本のための政策を今、一つずつ実行に移そうとしている。