No. 1085 待ち受ける荒涼たる未来

ブラジル、ロシア、インド、中国、南アフリカの5カ国(BRICS)首脳が、新しく開発銀行と為替準備基金を創設することを発表した。5カ国で世界のGDPの2割を占める新興国が、世界銀行やIMFに代わる資金を提供する独自組織を作るのである。

1946年、戦後の新しい経済のシステムを作るために、アメリカが中心となって、世界銀行とIMFが発足した。加盟国がお金を出し合い、途上国の開発を支援し、日本は52年に加盟している。簡単に言えば、IMFは債務危機に陥った国へお金を貸し出し、世界銀行は開発のために長期的にお金を貸し続けてきた。

IMFはアルゼンチンや韓国などへ数百億ドルの融資を行い、引き換えに厳しい財政支出の削減、増税、引き締め的な金融政策などの経済プログラムを義務づけた。しかしそれによって対象国の失業率は上がり、景気後退はさらに深刻化した。そのIMFは去る5月、日本に対して、来年10月に消費税を予定通り10%へ引き上げ、中長期的な財政再建のために消費税を段階的に「最低でも」15%へ引き上げることを提言した。日本はIMFの管理下にあるどころか、出資しているのである。それにもかかわらずこのような要求をしてくるのであるから、IMFの目的が経済の安定どころか破壊であり、そのあとの略奪にあることは明らかである。

融資の条件に残酷な緊縮財政手段を課すIMFと、BRICS開発銀行が競合すれば、支援を求める国がどちらを利用するかは想像に難くない。またアメリカはTPPで中国を意図的に疎外し、ロシアにも経済制裁を加えるなど、中国とロシアを敵視している。その2国が参加するBRICS開発銀行は取引に米ドルを迂回(うかい)することは間違いなく、そうなれば国際市場におけるドル覇権は終わらないとしても弱まるであろう。

またドイツがEUを抜けてBRICSに参加することもあり得るかもしれない。なぜならアメリカはドイツ政府にスパイ行為をしているし、何よりドイツはロシアからのエネルギー資源が必要だ。アフリカ大陸の中で最も豊かで力を持つ南アフリカによって、アフリカ諸国も世界銀行からBRICSへ移行するであろうし、南米のブラジルが参加しているということは、アメリカが敵視するベネズエラなど、他の南米の国々も「拡張BRICS」として参加することも考えられる。

アメリカが弱体化することなど考えられないという人は、衛星国をはべらせるほど大国であったソ連があっという間に崩壊してしまった事実を思い出してほしい。そしてこの動きが加速すれば、日本はどうなるのか。特に韓国と北朝鮮が中国のいるBRICSチームに入ってしまったら、弱まるアメリカとともにこの極東の片隅で日本は衰弱していくのであろうか。

少なくとも、アメリカの言いなりになってアベノミクスを続けていく政府が日本を統治している限り、荒涼たる未来が日本を待ち受けている。