No. 1088 改善されぬ景気

財務省によると、2014年度一般会計予算のうち国債費は23兆3千億円(債務償還費13兆1千億円、利払い費10兆1千億円)で、国の税収50兆円のうち10兆円が金利ということになる。

景気回復のためにと、アベノミクスで市場には超低金利の潤沢な資金が出回っている。しかし政府は、景気を回復できるとも、また回復したいとも思っていないのではないだろうか。なぜなら日本が超低金利政策をとり始めたのは1999年、言い換えると15年間も低金利が続いているのに日本の景気は一向に改善されていない。それどころか今年、消費税増税後の4~6月期の実質GDPは前期比年率マイナス6.8%と大きく落ち込んでおり、それにもかかわらず安倍首相はまだ消費税率10%への引き上げをもくろんでいる。

10%はおろか消費税8%でも実質可処分所得が減り、家計を圧迫している。少なくとも今後、個人消費が日本の景気をけん引することはありえない。

しかし、もし景気が回復すれば、それに合わせて金利も上昇する。今、10年国債の利子は0.51%だが、その利払いが10兆円だ。金利上昇で国債の金利が80年代のように7~8%に上がれば利払い費も大きく増え、たとえ税収が増えても国債費ですぐに消えてしまうだろう。だからこそアベノミクスという愚策をとることで、日本の景気を永久に上がらないようにしているのではと思わずにはいられない。

実際、アベノミクスを始めた13年からGDPは0.8%しか増えていない。当初掲げた2%のインフレターゲットが達成されていれば、国債市場は崩壊するか、または価格を改定する必要に迫られていただろう。いくら消費税を増税しても国の借金を返済することなど不可能だし、日本の景気が今後上がることはなく、日本はこれからも成長どころか縮小する経済を覚悟しなければならないということだ。

8月の報道によれば防衛省は、来年度予算の概算要求に約5兆円、本年度より3.5%増を計上し、オスプレイに無人戦闘機、ステルス戦闘機、オスプレイを配備する佐賀空港周辺の土地取得費用、長崎県につくる「水陸機動団」の拠点整備等々に使うと言う。法人税もさらに減税する意向のようであるし、軍需産業や大企業へのばらまきのために、社会保障や年金はこれからもカットされていくことは間違いない。高齢化社会の日本において、今後ますます貯蓄率は減少し、貧困率は上昇するだろう。

気候変動、石油資源の減耗、日本の宗主国アメリカの没落など、他にも多くの要因でこれから日本という国がどのような方向へ向かうか、未来のシナリオは現状ではなんとも言えない。しかし、アメリカに原爆を投下された日本がその後30年間で奇跡的な復興を遂げたことを考えると、より多くの国民が経済成長を求めることをやめて持続可能なやり方を模索するようになれば、日本の新たな再生は不可能ではない。