No. 1090 再生可能エネルギー転換を

昨年9月、大飯原発が停止して以来、稼働する原発が1基もなくなった今夏、日本は原発ゼロで乗り切ることができた。

振り返ると、暑さよりも局地的な豪雨がもたらした災害による痛ましい記憶がよみがえる。あらためて、自然の脅威、特に気候変動の影響による、これまでみられなかった災害が多発するという状況に、もはや「想定外」などという言葉で片付けられないものを感じる。

福島第1原発事故から3年半、原発の安全性を疑問視する国民の声は依然と強い中、原子力規制委員会は9月、川内原子力発電所1,2号機について、原発事故を踏まえた新しい規制基準に適合しているとして「審査書」を了承した。これは再稼働してもよいということだが、なぜ原子力規制委員会が再稼働を許可できるのか、私は理解に苦しむ。

福島第1原発では8月、放射能の汚染水が海に流れ出すのを防ぐために建設を予定していた「氷の壁」を断念し、470億円、全額国の負担で、原子炉建屋への地下水の流入を遮断する凍土壁の設置と汚染水を浄化する装置の増設を決定した。今年中に取り掛かるというが、つまりそれまでは高濃度の汚染水は流出し続けるということだ。

さらに原発事故で放出された放射性物質が、人、食料、環境に及ぼす長期的な影響もいまだに徹底検証はなされていない。そして何よりも解決しなければならないのが、核廃棄物の処分問題である。

原発保有国の中で唯一、高レベル核廃棄物の処理場建設に着手したのはフィンランドだ。地下深く、多重バリアーの中に使用済み燃料棒を埋め込み、放射性微粒子が生物圏に届かないようにするというものだが、安全なレベルに達するまでにかかる時間は10万年、人類の歴史の10倍もの長さになる。

この夏、原発に変わり、老朽化した火力発電所をフル稼働したためにトラブルが起きたというが、それなら政府は国民に節電を命じるべきであった。日本の電力消費量はGDPも人口も増えていないのに1989年から30%も増えている。これはわれわれが電力を過剰に使っているということに他ならない。1人当たりの使用量で日本人より電力を浪費しているのはアメリカだけだ。

たとえ電気料金が上がろうとも、原子力発電によってつくられていた分の電気を太陽光発電などの再生可能エネルギーに置き換えることだけが、唯一の安全で長期的な解決策だと私は信じている。また近年は家庭におけるエネルギー管理システム(HEMS)の導入で、電力使用はより効率的に行われ、そのためずっと少ないエネルギーで同じ利点を得ることができている。

28年前に爆発事故を起こしたチェルノブイリ原発は、放射能の放出を防ぐためにコンクリートで覆われたが、老朽化が激しく、今、新たな石棺を建設中である。原発事故の収束は、人類の歴史からみれば永遠とも言える時間がかかる。

頻発する地震、異常気象による災害が今後、原発に及ぼす影響は計り知れない。危険な原子力発電に見切りをつけ、再生可能エネルギーに転換し、その際は政府主導で経済と雇用のために100%国内メーカーと国内のサービス提供者を利用していく。それが国と国民にとって健全で安全なエネルギー政策となるのだ。