今秋に予定されていたロシアのプーチン大統領の日本訪問が延期されると報じられた。ウクライナ危機をめぐり、日本がアメリカに倣いロシアに制裁を科したことが原因である。
日本政府は9月24日、ロシアへの追加制裁を発動し、日本国内におけるロシア大手銀行の証券発行禁止や、軍事転用が可能な民生品の輸出を制限するという。今年3月にロシアがクリミア半島を編入した際に1度目の制裁を行使したが、今回も欧米が制裁を発動したことで足並みをそろえたのだという。
プーチン大統領の来日延期は、政府関係者によればアメリカの理解を得られなかったためだというが、要するにそれはアメリカが、日本とロシアが近づくことを許さなかったということだ。総督は独立した外交を行うことはできず、常に宗主国の言うことを聞かなければいけないのである。
日本がアメリカに逆らえない理由はいくつもあるが、一つは安全保障問題においてアメリカの軍事力に強く依存していることが挙げられる。しかし本来とるべき道は、近隣の中国、北朝鮮、韓国、そしてロシアなどと対話を通して問題を解決することであり、軍隊を強化し集団的自衛権でアメリカとともに戦うことではない。
昨今の報道メディアは、相変わらず正義はアメリカにあり、それに逆らう国は全て悪であるかのように報じる。しかし日本がとったロシアへの経済制裁は、果たして正当な理由があるのだろうか。ウクライナ国民が選挙で選んだ大統領を倒したのはオバマ政権だったし、墜落したマレーシア航空機の調査を妨害しているのもアメリカである。クリミア住民の大部分がロシアに併合されることに賛成したにもかかわらず、それをロシアの侵略のように報じられているが、アメリカこそ世界の多くの国を侵略し爆撃し続けている。
一方、ロシアは、プーチン大統領が「2週間以内にキエフ(ウクライナ)を占領できる」と発言しただけで、それが、ロシアが戦争を起こそうとしている危険な国であるとして、メディアには報じられる。プーチンの言葉を意図的に誤って伝えるプロパガンダそのものだ。もちろんロシアは簡単にキエフを制圧する力があるだろう。しかし危険なのは、欧米の政治家やメディアがこのような意図的な誤訳をして、国民の間にロシアへの恐怖心や敵対心を醸成していくことなのだ。
アメリカにはそうせざるを得ない理由がある。ロシアとヨーロッパは地理的に当然ながら天然資源などを通して長期にわたる強力なパートナーで、ロシアからの天然ガスのパイプラインはヨーロッパにとって欠かすことはできない。だからアメリカはそれを分断するためにも、ウクライナ問題に介入してロシアの脅威をあおるのである。
アメリカがロシアやイラン、中国などの国々を非難しても、忘れてならないのは、世界最大の軍事費を使い、世界最大の兵器ディーラーで世界中に武器を販売しているのはアメリカだということだ。1962年、アメリカとソ連は核戦争寸前の状態に追い込まれたが、フルシチョフ書記長とケネディ大統領が合意に達し、戦争はまぬがれた。その冷戦時代に逆戻りしないためにも、扇動的な報道に惑わされず、また自立した政策をとるために日本はアメリカへの依存をやめなければいけない。