近年、中国とインドが急接近している。インドのモディ首相は中国の経済発展を評価し、インフラや製造業などでの中国との協力強化関係を築く意向を示した。
インドが中国の経済力に期待していることは明らかであり、それに応えるべく、昨年インドを訪問した中国の習近平国家主席は、今後5年間でインドに200億ドル(約2兆1600億円)を投資することを軸とした経済関係の強化策を表明している。
中国とインドを合わせると人口約25億人、両国が協力すれば世界に影響を与えることは間違いない。またインドはロシアとの関係も強化しつつあり、ヨーロッパとアジアを合わせたユーラシア大陸において、中国、インド、ロシアの協力体制が整えば、長年アメリカが恐れてきたことが現実化する可能性が高まる。
アメリカの国家安全保障アドバイザーであったブレジンスキーは1997年に「ユーラシア地政学」という論文を発表し、ユーラシア大陸を「地政学的な巨大なチェス盤」にたとえ、アメリカがいかにそれを支配するかを書いた。その中でブレジンスキーは、その地域だけで経済ブロックやある種の連邦としてまとまれば、アメリカのユーラシアでの影響力は劇的に縮小すると予測したのだ。
ユーラシア戦略を転換するかのようにアメリカは2011年、アジアに焦点を絞った「アジア基軸戦略」を発表した。それはアジア地域での覇権を強めて中国を抑えるためであり、経済的に中国を締め出すTPP(環太平洋経済連携協定)もその流れの中に位置する。オバマ大統領は「アジアの安全は大国が小国を虐げるような威圧や脅しではなく、国際法や国際規範で確保されなければならない」と中国の勢力拡大を批判したが、アフガニスタンやイラクをみれば分かるように、アメリカが介入すれば同盟国を守るという理由でアジアを戦場にしかねないだろう。
冷戦時代から敵同士であった中国とインドは、BRICSによってブラジル、ロシア、南アフリカと共に協力体制をとり始めたし、2001年にはロシアと中国が中心となり上海協力機構も設立され、昨年インドが加盟を申請した。ユーラシアでは確実に地政学的流れを変える進展が起き、統合が進んでいる。
ある日本のメディアは、インド・カシミール地方に駐留する中国軍を引き合いに出して中国とインドの対立を報じるが、中国軍のインド駐留が問題なら、沖縄の辺野古で、県民の反対を無視して行われている米軍新基地の建設準備工事こそ大問題として報じられるべきである。それとも、中国とインドという独立国同士の問題と違い、アメリカとその属国にある基地問題は取るに足らないとでもいうのだろうか。
いずれにしても、好戦的なアメリカのために政府が日本の国土を米軍基地として提供し続ける限り、平和的な手段と対話を通じて紛争を解決しようとするロシア、中国、インドといったユーラシアの大国と距離は近づかない。1952年に主権を回復した日本は日米安保条約を締結して軍事同盟をつくったが、そろそろアメリカ追従をやめ、真の主権を取り戻すべきであろう。