「シェール革命で米国が世界一の産油国になった」と、英石油大手BP社が6月10日に発表した。世界のエネルギー統計によれば、2014年の原油生産量(1日当たり)で米国がサウジアラビアを上回り、世界最大の産油国になったというのである。
米国が最後に原油生産で世界一になったのは1975年だから、約40年ぶりである。シェール革命のおかげで世界一に返り咲いたのだが、早くも同じ6月にブルーグバームが「シェール・ブームは急速にしぼみつつある」と報じている。米エネルギー情報局(EIA)の推計によると、テキサス州などのシェール層の原油生産は6月に1.3%減少し、日量558万バレルとなる見通しで、7月にはさらに落ち込むと見ている。
EIAでは稼働している掘削装置の数をもとに生産量を割り出し予測しているが、稼働中の装置の数は今年に入ってから減少し、現在では半数以上が停止している。今年初めにはテキサスの大手企業だったWBHエナジー社が倒産し、3月にはクイックシルバー社が子会社を含めて米国連邦破産法第11条を申請した。破綻したエネルギー会社が産出を続けるのは困難であることは言うまでもない。
EIAは2011年に、カリフォルニア州モントレー・シェール社の石油埋蔵量は154億バレルであると発表したが、今年になってその原油埋蔵量の推計値を96%も下方修正したことからもわかるように、EIAの予測は楽観的だ。従って米国のシェールオイル生産は、多くの人が予想しているよりもっと早く落ち込むと思われる。なぜなら掘られた井戸からの平均産出量は時間と共に急速に低下し、その生産量を維持するにはより多くの井戸を掘削しなければならない。しかしエネルギー会社に、もうその余力はないからである。
オバマ大統領は2012年の一般教書演説で、「シェール革命」で米国が世界最大のエネルギー大国となり、燃料価格が劇的に下がって製造業は復活し、雇用も改善されると宣言した。米国は2020年にはエネルギーの純輸出国になり、エネルギー面で自立すると豪語したのである。そしてこのシェール革命に期待して、日本から多くの企業が名乗りを上げた。だがシェールオイル、シェールガスに投資した日本企業はすべて損失を計上した。なぜなら透過性の少ない頁岩(シェール)の中にあるオイルやガスを採るためには多額の費用がかかる上に、井戸は数年で枯れてしまうため、次々に掘削し続けないかぎり生産量が維持できないからだ。
日本のメディアは、シェールオイルが苦戦を強いられているのはOPEC諸国が減産をしないために原油価格が下がっていることが唯一の原因であるかのように報じているが、現実問題として、たとえ原油価格が1バレル100ドルであったとしてもシェールオイルは最期を迎えていただろう。なぜならそれは、もともと採算が合わない、非経済的なエネルギーだったからである。「シェール革命」なるものは、もとより衰退する米国が世界から資金を集めるための詐欺まがいの宣伝だったということだ。