No. 1125 再生エネルギーへのシフトを

米国の二大石油会社、エクソンモービルとシェブロンの2015年第二4半期の決算が共に過去10年間で最低となったことが明らかになった。

原油価格の下落が止まらない。8月24日の時点で米原油先物相場は一時1バレル40ドルを下回るなど、1年で半値以下という原油安が続いている。資源のない日本のような国にとっては恩恵であるが、世界においてはさまざまな影響が出始めている。

原油価格の急落が始まって以来、米国の油田で働く労働者たちのリストラが始まり、すでに少なくとも9万人以上が職を失ったという。油田関連機器を製造する企業や事務職、そして地質学者や石油技術者などにも影響は及んでいる。経営悪化で雇用の次に削減されるのは新規投資で、高額な石油プロジェクト、例えばカナダのサンドオイルやアフリカ西海岸での深海油田開発などが軒並み延期やキャンセルとなった。これらの開発では、石油が1バレル80ドルから100ドルで販売できなければ利益を得ることができないからである。

石油価格が上がらない限り、今後も巨大プロジェクトへの投資は削減され、エネルギー企業だけでなくその収益に依存する産業や社会、国家にも影響が及ぶ。米エネルギーサービス会社のハリバートンは昨年末に全従業員12万人のうち9千人を削減し、今年7月さらに1万2800人の追加削減を発表するなど、原油安が雇用と地域コミュニティーに及ぼす影響は計り知れない。また石油の輸出に依存するロシア、ナイジェリア、ベネズエラといった国は収入の激減に直面し、その結果、政府の支出削減が余儀なくされて貧困が広まるなど社会不安が起きている。

2014年の石油価格の下落には3つの要因があったといわれる。米国のシェールオイル生産量の増加、石油輸出国機構(OPEC)加盟国が石油の産出量を減らさなかったこと、そして中国での石油消費の減少である。石油供給量が増え、需要が減少すれば価格が下がるのは当然であり、今後、イラン核協議合意で経済制裁が解除されれば、イランからの追加供給分が増えるであろう。しかし現在の中国経済の様相をみれば需要増は考えにくく、供給が需要を上回れば、石油価格は当分低いまま推移することは確実である。

これらの出来事はエネルギー業界や世界経済にとって悪いニュースだが、地球にとっては良いニュースかもしれない。人々は株価の上下に一喜一憂するがそれは世界経済の短期的な指標にすぎず、実体がなく、人工的に膨張されたバブルはこれまでに何度もはじけてきた。一方で世界の石油需要が減るということは石油消費、二酸化炭素排出が減ることであり、また、採掘すればするほど汚染物質が自然界にばらまかれるシェールオイルやタールサンドの開発見送りは長期的にみて環境汚染の減少につながる。世界経済を牛耳ってきた巨大エネルギー企業の影響力が弱まっている時こそ資源を節約して技術開発を行い、石油をめぐる戦争をなくすためにも再生エネルギーへのシフトを今こそ進めるのである。