No. 1136 デメリット大きいマイナンバー

1月からマイナンバーの利用が始まったが、国内外を問わず、重要なデータを狙い撃ちするようなサイバー攻撃が増えている。

アメリカでは、インターネット上に公開された情報を悪用した不動産詐欺事件が増加している。ウォール・ストリート・ジャーナル紙の報道では、インターネットで公開されている空室物件情報を使って証書が偽造され、物件がインターネットサイトで簡易決済、現金即決などで安く売却されてしまう事件が続発しているという。

不動産市場を活性化させるという目的で、アメリカではインターネット上での文書の公開が進み、不動産の証書や抵当証書などのコピーが簡単に閲覧できる。所有者の署名や住所、抵当権の総額や先取特権付きかどうかなどの情報も含まれている場合もあり、それらを使って所有者になりすまし、不動産を譲渡するための偽造証書を作成して詐欺行為が行われる。こうした犯罪の増加にもかかわらず、議員や規制当局者は依然としてインターネット上での情報開示を支持している。なぜなら不動産売買の手続きが簡略化されることでビジネスが活性化するからだという。

インターネットによって、さまざまな情報機器を含むモノたちが電子的に接続されることで個人のプライバシーに関する問題も起きている。機器が発している人間の耳では認識できない超音波の信号を利用しながら、テレビや携帯電話、PCなど、複合的に使っているユーザーを追跡する技術が開発されているのである。

アメリカのデジタル著作権関連団体(CDT)によると、シルバープッシュやフラーリーといった企業がこうした仕組みを導入しており、またアドビも同様の技術を開発しているという。これはテレビCMやウェブ広告に人間には聞こえない高周波数の音声信号を埋め込み、ユーザーがそれらを見た時にその音を再生させると、テレビの近くにあるスマートフォンにインストールされたアプリがその音を認識する。そしてブラウザに組み込まれたCookieを利用してユーザーとそれらの機器をひも付けし、どのCMを見て何をオンラインで購入したかといったユーザーの一連の行動を追跡できるというのである。

広告主は、個人の所有する携帯電話やPCにわたってその好みや行動に関する一連のデータを収集することで、より粒度の高い情報を集めることができる。そして既にアメリカではいくつかのマーケティング会社がこの技術を利用しており、ユーザーはそれを関知できないばかりか、オプトアウト(拒否)することもでき
ないという。

マイナンバーで社会保障や幸福は増えないのに、国民は家族構成や税金の支払い状況、給料、預貯金や資産情報、生命保険や医療に関する情報までも国に管理されるようになる。さらには、超音波を使って情報を抜き取るというSFまがいの技術が既に実在し使われているのだから、個人情報を不正利用するサイバー犯罪が起きる可能性も高い。行政の効率化や利便性というマイナンバーのメリットに比べ、そのデメリットはあまりにも大きい。